セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

B型肝炎-病態・診断4

タイトル 肝P-286:

リツキシマブ投与例におけるHBV再活性化対策の現状

演者 内田 靖(松江赤十字病院・消化器内科)
共同演者 板倉 由幸(松江赤十字病院・消化器内科), 山下 詔嗣(松江赤十字病院・消化器内科), 花岡 拓哉(松江赤十字病院・消化器内科), 實藤 宏美(松江赤十字病院・消化器内科)
抄録 【目的】2009年に免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインが作成され,リツキシマブをはじめとする免疫抑制剤や抗癌剤を投与する際のHBVマーカー測定,HBVモニタリング,予防的核酸アナログ投与に関するアルゴリズムが提示されたが,現在でもde novo肝炎の報告が散見される.今回,当院におけるリツキシマブ投与例でのHBV関連マーカーの測定状況,モニタリングの実態,de novo肝炎の発生頻度について検討を行った.【対象】リツキシマブが承認された2001年10月から2012年9月までに,当院にて初回投与された301症例(男性158例,女性143例,平均年齢67.3歳).【結果】HBs抗原は全例で測定され,5例(1.7%)で陽性であった.HBc抗体は2005年まで測定されず,2006年以降では231例中197例(85.3%)で測定,68例(34.5%)が既感染と判断された.HBVモニタリングは2006年10月から開始され,25症例(男性16例,女性9例,平均年齢67.3歳)で実施された.HBs抗原陽性3例は全例核酸アナログ投与,HBc抗体陽性例中32.4%(22例)のみHBVモニタリング継続,うち3例(13.6%)においてHBV-DNA増幅を認め,核酸アナログ投与が投与された.全期間を通じ6例(2.0%)のHBV再活性化関連肝障害が認められ,5例がde novo肝炎であった.当院では2006年に初めてリツキシマブによる再活性化例を経験し,2007年にde novo肝炎死亡例が発生した.しかし,血液内科との共通の認識が得られず,2010年に再度de novo肝炎の発生を認めた.そのため2011年以後,リツキシマブ投与全症例のHBV関連マーカー測定,HBVモニタリングを消化器内科にて実施している.【結論】リツキシマブ投与例でのde novo肝炎の危険性は十分周知されているが,HBVモニタリングは十分には実施されていない.今後,免疫抑制・化学療法の進歩に伴って,HBV再活性化対策はさらに重要になってくる.多岐にわたる薬物や診療科におけるモニタリングの徹底は,啓蒙や連携のみは困難であり,なんらかの院内システムの構築が必要と考える.
索引用語 リツキシマブ, HBV再活性化