セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

B型肝炎-病態・診断4

タイトル 肝P-288:

免疫抑制療法を受けたHBVキャリアおよび既往感染者における再活性化の検討

演者 仁科 惣治(川崎医大・肝胆膵内科)
共同演者 小山 展子(川崎医大・肝胆膵内科), 佐々木 恭(川崎医大・肝胆膵内科), 富山 恭行(川崎医大・肝胆膵内科), 吉岡 奈穂子(川崎医大・肝胆膵内科), 原 裕一(川崎医大・肝胆膵内科), 日野 啓輔(川崎医大・肝胆膵内科)
抄録 【目的】近年様々な領域で多様な免疫抑制作用を有する薬剤が投与されているため,HBV既往感染者に対する再活性化リスクが注目されるようになった.そこで当院で免疫抑制・化学療法を受けた既往感染者およびHBVキャリアの再活性化について検討した.【対象と方法】2008年1月~2012年2月に免疫抑制・化学療法を受けた既往感染者138例の再活性化率ならびに再活性化関連因子等を検討した.また同時期に免疫抑制療法を受けたHBVキャリア15例の特徴についても検討した.【結果】HBV再活性化率は10.1%(14/138)であり,主な治療法別再活性化率(重複含む)は,リツキシマブ23.3%,PSL 14%,MTX 3.1%,生物学的製剤0%であった.多変量解析では初診時HBc抗体陽性/HBs抗体陰性(v.s HBc抗体陽性/HBs抗体陽性,odds ratio:4.703,95%CI:1.290-17.150,P<0.05)が再活性化関連因子であった.さらに血液疾患・悪性腫瘍領域46例のみに絞っても,多変量解析で初診時HBc抗体陽性/HBs抗体陰性(v.s HBc抗体陽性/HBs抗体陽性,odds ratio:7.00,95%CI:1.423-34.434,P<0.05)が再活性化関連因子であった.再活性化を認めた14例は全例核酸アナログ製剤(NA)が投与されたが,そのうち8例は厚生労働省研究班ガイドラインに準じたNA投与開始が可能であった.一方,肝炎発症後に再活性化を指摘された6例のうち1例は劇症肝炎で死亡した.HBV キャリア 15例のうち厚生労働省ガイドライン通りにNA投与されたのが13例であったが,全例NA投与後HBV-DNA陰性化した.肝炎発症後に再活性化を指摘された2例のうち1例は劇症肝炎で死亡した.【結論】今回の検討において,従来指摘されているHBc抗体陽性に加えHBs抗体陰性症例での再活性化リスクについて,特に血液疾患・悪性腫瘍領域において注意が必要と考えられた.また,HBVキャリアおよび既往感染例いずれに対しても厚生労働省研究班ガイドラインの順守は重篤な肝炎発症予防に重要と考えられた.
索引用語 HBV再活性化, 免疫抑制剤