セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

C型肝炎-基礎3

タイトル 肝P-295:

C型肝炎の脂質代謝障害におけるミトコンドリア異常の意義

演者 原 裕一(川崎医大・肝胆膵内科)
共同演者 仁科 惣治(川崎医大・肝胆膵内科), 日野 啓輔(川崎医大・肝胆膵内科)
抄録 【目的】われわれはこれまでにC型肝炎の脂質代謝障害機序としてβ酸化律速酵素であるCPT Iの障害や脂質関連転写因子であるSREBP1の転写後活性化がHCV起因性のミトコンドリア障害により引き起こされることを報告してきた(Liver Int 2010, 2011).一方,ミトコンドリアは強力な抗酸化能力も有し,障害ミトコンドリアはミトコンドリア選択的autophagy(mitophagy)により排除されることが明らかにされている.そこでC型肝炎におけるミトコンドリア起因性脂質代謝障害にmitophagyの抑制が関与しているのか否かを明らかにするために以下の検討を行った.【方法】HCV-JFH1感染細胞,HCV全遺伝子を組み込んだレプリコン細胞(OR6),HCVコア蛋白発現調整細胞,HCVトランスジェニックマウスならびにHCV感染ヒト肝細胞キメラマウスを用いてmitophagy制御分子の解析を行った.【結果】In vitro,in vivoともにHCV感染あるいはコア蛋白存在下ではmitophagyの実行分子でありユビキチン結合酵素であるParkinのミトコンドリアへの局在が阻害され,以下のmitophagy signalが抑制された.共免疫沈降ではHCVコア蛋白とParkinの結合が確認され,さらに興味深いことにyeast two hybrid assayによりParkinのN端側とコア蛋白が結合することが明らかにされた.【結論】HCVコア蛋白によるミトコンドリア障害はC型肝炎における脂質代謝障害に重要な役割を果たすが,今回の検討からコア蛋白はmitophagyの抑制というミトコンドリアの品質管理も抑制することで持続的なミトコンドリア障害と酸化ストレスの増幅を引き起こしことが明らかになった.このmitophagyの抑制はC型肝炎における脂質代謝異常を形成する重要な分子機序のひとつと考えられた.
索引用語 ミトコンドリア, SREBP1