抄録 |
【目的】HCVはlipo-vial particle(LVP)を形成する.肝細胞への感染はLVP表面のapoEと肝細胞膜上の受容体の結合が重要で,apoEの濃度やアイソフォームはC型慢性肝炎の病態に影響を及ぼすとされる. HCV感染と血清apoE濃度との関連について検討した.【方法】SVR達成66例(G1b 38例,G2 28例), HCV持続感染中261例(G1b 160例,G2 101例)の空腹時apoEを免疫比濁法で測定し,血液生化学データ,ウイルス量との関連を検討した.別途にPeg-IFNとリバビリン(2剤)療法で効果判定されたG1b高ウイルス量102例(SVR55例,TVR16例,NVR31例)の治療前apoE値と効果の関連についても検討した.【結果】SVR後の血清apoE(mg/dL)平均値はG1b 3.98,G2 4.08で,治療前のHCVゲノタイプにかかわらず同様であった.持続感染例のapoEは4.51とHCV排除症例に比し有意(p<0.001)に高く,G1b感染例では4.69,G2で4.34とG1b感染例がより高値であった(p=0.049). G1bでは慢性感染例が有意(p<0.001)に高く,G2では差を認めなかった.持続感染ゲノタイプ予測に有用な因子のlogistic回帰分析では,年齢,アルブミン値,ウイルス量,apoEが低く,AST,LDLコレステロールが高いことがG2感染予測の独立因子であった.なお,HCV持続感染時のapoE値変動の約30%は中性脂肪,総コレステロール,年齢,性,HCVゲノタイプで説明可能であった.G1b高ウイルス量に対する2剤併用療法の治療効果との比較では,SVR+TVR群のapoEはNVR群に比して4.30 vs 4.83と低く,IL28B majorではminorに比し低値であった.NVRに寄与する因子のlogistic回帰分析では,IL28B遺伝子多型と血小板数が有意な独立因子として抽出され,apoEは抽出されなかった.【結論】血清apoEはHCV G1bの慢性感染で増加する.その増加は2剤併用療法の治療反応不良性と関係しているが,logistic回帰で独立した予知因子とはならないことから,治療反応性の予知においては交絡因子で,臨床的有用性は低いと考えられる. |