セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

NAFLD・NASH6

タイトル 肝P-322:

肝障害をめぐる腸肝相関:DSS腸炎モデルとNASHモデルの対比

演者 瓦谷 英人(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
共同演者 守屋 圭(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 高谷 広章(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 堂原 彰敏(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 辻本 達寛(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 吉治 仁志(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 藤本 正男(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 植村 正人(奈良県立医大・医療安全推進室), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
抄録 【目的】近年メタボリックシンドローム(MS)においてTNF-αや腸管からのBacterial translocation(BT)の関与が強く示唆されている.またNASHはMSの肝臓での表現型として認識されるようになってきており,NASHでは腸内細菌叢でのグラム陰性菌の増加とBTの亢進,門脈血エンドトキシン(Et)の増加が肝障害を惹起するという仮説がある.今回我々はラットNASHモデルおよび局所でTNF-αを誘導する腸炎モデルを作成し,肝臓および小腸における自然免疫反応について検討した.【方法】F344ラットにコリン欠乏アミノ酸(CDAA)食を8週間投与してNASHモデルを,1%DSSおよび水を1週間ずつ8週間交互に投与し,腸炎モデルを作成し,コントロール群(Cont群),CDAA群(C群),DSS群(D群)の3群間で以下の項目を検討した.門脈血を用いALT,TNF-α(ELISA法)を測定した.また,real-time PCR法にて全肝および小腸のTLR-2,TLR-4,TNF-α,collagen 1α1を測定した.また,門脈血中のEt濃度およびFITC-dextranを用い腸管透過性を測定した.【成績】小腸でのTLR-2,TLR-4,TNF-α値はCont,C群は同等でD群で上昇していた.一方全肝のTLR-2,TLR-4,TNF-α値および血清ALT,TNF-α値はCont,D群は同等でC群で上昇していた.また小腸でのcollagen 1α1はCont,C,D群間で変化を認めなかった.一方全肝のcollagen 1α1はCont,D群は同等でC群で上昇していた.門脈血中EtおよびFITC-dextranを用いた腸管透過性はCont,D群は同等でC群で上昇していた.【結論】腸炎モデルラットでは小腸局所でのTLR2,4およびTNF-αは亢進していたが,腸管透過性の変化や肝への影響は認めなかった.NASHモデルラットでは門脈Etの上昇および腸管透過性が亢進し,肝でのTLR2,4およびTNF-αは増加していた.DSSによる軽度の腸管粘膜障害だけでは肝障害は起きず,門脈血中Etの上昇,腸管透過性の亢進が加わって始めて肝臓の炎症が惹起されることが示唆された.
索引用語 NASH, DSS