セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

NAFLD・NASH6

タイトル 肝P-323:

NASH肝線維化進展における腸管透過性亢進の役割

演者 堂原 彰敏(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
共同演者 吉治 仁志(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 守屋 圭(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 野口 隆一(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 浪崎 正(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 相原 洋祐(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 瓦谷 英人(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 北出 光輝(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
抄録 【目的】我々はこれまでに肝線維化とエンドトキシン(Et)をめぐる腸管相関の関連に注目し,難吸収性抗菌薬を用いて内因性Etを制御することで肝線維化が有意に抑制されることを報告してきた.今回は,NASH肝線維化進展における腸管透過性亢進の役割につきToll-like receptor 4 (TLR4)との関連を中心に検討した.【方法】雄性F344ラットにコリン欠乏アミノ酸食 (CDAA)を投与して実験的NASH肝線維症を作製した.コリン添加アミノ酸 (CSAA) 食投与ラットを対照群とし,難吸収性抗菌薬であるPolymixin B sulfate 1g/LおよびNeomycin 3g/Lをdrinking waterに溶解し,1週休薬・3週投与を2回繰り返し計8週投与した.肝線維化の程度について組織学的に検討するとともに,α-SMAを指標とした活性化肝星細胞 (Ac-HSC)の免疫染色,および肝内のTotal collagen,TGF-βについても解析を加えた.さらに,TLR4の肝と小腸におけるmRNA発現,およびLPS-binding protein (LBP) mRNA発現について検討した.腸管透過性については,FITC-dextranを経口投与し,4時間後に門脈血中のFITC蛍光強度を測定することにより解析した.【成績】CDAA+抗菌薬投与群ではCDAA投与群に比し,肝線維化は有意に抑制され,Ac-HSCの増加も同様に抑制された.なお,collagen,TGF-β発現はmRNA,蛋白量共に線維化の程度とほぼ平行するように抗菌薬投与により抑制されていた.肝におけるTLR4 mRNA発現はCDAA投与群で有意に増加し,抗菌薬投与により抑制されたが,小腸におけるTLR4 mRNA発現は有意な変化を示さなかった.一方,CDAA投与時のLBP mRNAおよび腸管透過性の亢進は抗菌薬投与により有意に抑制された.【結論】難吸収性抗菌薬は,肝に到達する内因性Etを減少させることに加え,腸管透過性を抑制することでTLR4を介したHSCの活性化を阻害し,TGF-β,collagen産生を低下させることが考えられた.腸管透過性の制御はNASH肝線維化進展予防への新しいアプローチとなり得ると考える.
索引用語 NASH, エンドトキシン