セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

NAFLD・NASH7

タイトル 肝P-326:

非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDに対する瀉血療法の効果

演者 諸岡 留美(三重大大学院・消化器内科学)
共同演者 岩佐 元雄(三重大大学院・消化器内科学), 杉本 龍亮(三重大大学院・消化器内科学), 宮地 洋英(三重大大学院・消化器内科学), 田中 秀明(三重大大学院・消化器内科学), 藤田 尚己(三重大大学院・消化器内科学), 小林 由直(三重大大学院・消化器内科学), 生駒 次朗(みえ消化器内科・消化器内科), 垣内 雅彦(みえ消化器内科・消化器内科), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は肥満,糖尿病などの生活習慣病を基盤にして発症するが,肥満者には高頻度に鉄過剰がみられ,鉄過剰がNAFLDの増悪因子として関与し,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)進展へのsecond hitとして作用するとの報告がある.NAFLD/NASHの治療法は食事・運動による生活習慣の改善が基本であるが,実践や長期継続は容易ではなく,上記の背景から瀉血が有力な治療法となる可能性がある.しかし,NAFLD/NASHに対する瀉血療法の報告は少なく,多くが20例までのケースシリーズに留まっている.今回,48例のNAFLDに対し瀉血を施行し,生活習慣への介入のみを行った対照群と比較することで,その有用性を検討した.【方法】対象は2型糖尿病非合併NAFLDで,食事・運動療法と並行して瀉血療法を施行した瀉血群48例(男35,女13例,年齢47.9歳),同時期に生活習慣への介入を行った対照群42例(男21,女21例,年齢52.6歳)であり,血液検査値,体重の推移を比較した.瀉血は120-400ml/月,フェリチン値50ng/mlを目標とした.【結果】瀉血群,対照群の平均BMI,ALT,フェリチンはそれぞれ26.9 vs. 26.7,86 vs. 63 IU/ml,271 vs. 174 ng/mlであり,差はなかった.観察期間は平均33.4カ月であった.この間に,瀉血群では体重が平均0.3%増加したにも関わらず,AST(54⇒37 IU/ml),ALT(87⇒50 IU/ml),γ-GTP(100⇒56 IU/ml)とすべて有意(p<0.01)に低下した.一方,対照群では体重は平均2.3%減少しており,ALTは63⇒45 IU/mlと有意(p<0.05)な低下がみられたが,AST(51⇒40 IU/ml),γ-GTP(61⇒55 IU/ml)に有意な低下は認めなかった.観察期間中,瀉血によると考えられる副作用は認めなかった.【結論】NAFLDの増悪因子として鉄過剰状態が関与しており,体重減少がなくても肝機能検査値は改善した.瀉血は食事・運動療法が困難なNAFLDに対する治療選択肢になり得る.
索引用語 NAFLD, 瀉血