セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝循環・門脈圧亢進症4

タイトル 肝P-336:

肝硬変症に合併した静脈瘤出血後の抗生剤予防投与は短期予後を改善する

演者 石橋 啓如(国保旭中央病院・消化器内科DELIMITER千葉大・消化器内科)
共同演者 紫村 治久(国保旭中央病院・消化器内科), 横須賀 收(千葉大・消化器内科)
抄録 【目的】AASLDガイドラインは上部消化管出血を来した肝硬変患者全例への短期間の予防的抗生剤投与を推奨しているが(クラス1A),我が国のガイドラインでは抗生剤予防投与について明記されていない.我々は第40回日本救急医学会にて静脈瘤出血後救命率が近年向上している事を報告したが,2011年4月以降,抗生剤の予防投与を導入した事が一因と考えられた.今回,抗生剤予防投与が静脈瘤破裂を来たした肝硬変患者の短期予後に与える影響について検討した.【方法】対象は当院で内視鏡的止血術が施行された肝硬変症合併食道静脈瘤破裂患者119例(2006年4月~2012年10月).来院直後から抗生剤(広域セフェム系)の予防投与が行われた27例(A群:男24,女3,65±13歳,アルコール11,ウイルス性13,その他3)と行われなかった89例(B群:男72,女17,62±12歳,アルコール34,ウイルス性42,その他13)とで,1)患者背景(Child-Pugh grade,癌の有無,静脈瘤破裂歴),2)治療法と入院日数,3)死亡退院患者率,1年生存率について比較検討した.なお,両群で必要に応じてアルブミン投与が施行されていた.【成績】1)患者背景:Child-Pugh grade A/B/CはA群で0/12/15例,B群で0/36/53例,担癌患者はA群10例(内4例が制御困難),B群31例(内15例が制御困難)であった.また,初回治療例はA群24例(89%),B群81例(91%)であった.2)A群では26例で結紮術,1例で硬化療法が施行され,B群では全例に結紮術が施行された.平均入院日数はA群14±11(5-53)日,B群16±16(1-135)日であった.3)死亡退院はA群1例(3.7%),B群19例(20.4%)とB群で有意に高かく(P=0.034),1年生存率はA群83%,B群66%とA群で長い傾向を認めた(P=0.17).【考察】抗生剤投与が行われたA群では死亡退院患者が有意に少なく,1年生存率が高かった.今後長期予後についての検討が望まれる.【結論】肝硬変症に合併した食道静脈瘤破裂例での抗生剤予防投与は我が国でも予後を改善すると考えられ,ガイドラインへの明記が考慮される.
索引用語 静脈瘤出血, 抗生剤予防投与