セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝不全・栄養療法3

タイトル 肝P-353:

肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)前後の分岐鎖アミノ酸製剤投与意義の検討

演者 中野 聡(名古屋大・消化器内科)
共同演者 片野 義明(名古屋大・消化器内科), 今井 則博(名古屋大・消化器内科), 阿知波 宏一(名古屋大・消化器内科), 山田 恵一(名古屋大・消化器内科), 荒川 恭宏(名古屋大・消化器内科), 石津 洋二(名古屋大・消化器内科), 葛谷 貞二(名古屋大・消化器内科), 本多 隆(名古屋大・消化器内科), 林 和彦(名古屋大・消化器内科), 石上 雅敏(名古屋大・消化器内科), 中野 功(名古屋大・消化器内科), 石川 哲也(名古屋大・消化器内科), 後藤 秀実(名古屋大・消化器内科)
抄録 【目的】肝硬変患者において分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤投与により血清Albの改善,肝硬変合併症の抑制効果,肝発癌抑制効果などの有用性が報告されている.しかし,肝細胞癌(HCC)治療患者におけるBCAA補充療法の効果はまだよく知られていない.今回我々はBCAA製剤服用により,肝動脈化学塞栓療法(TACE)後の肝予備能,生存率に与える影響を解析検討した.【方法】2003年2月から2009年12月までTACEを行った肝細胞癌499症例のうち同一入院中もしくは3か月以内にPEIT,RFA,EVL等の追加治療をした症例,アルブミン製剤が投与された症例や脈管侵襲のあるものを除くと,154症例であった.治療選択バイアスを軽減するための手法であるpropensity score(PS)を用いて,背景因子,腫瘍因子11項目よりPSを算出し,両群をマッチングさせた50例の治療成績について比較検討した.【成績】両群間において,投与前の年齢,成因,Child-Pugh分類,Alb,PT,Bil,ChE,血小板,赤血球数,TACE回数,薬剤使用量に差は認めなかった.TACE前後のAlb変化量(後-前)はTACE 1か月後には,BCAA群で0.16±0.40 g/dl,非投与群で-0.06±0.27 g/dl,次回HCC治療時にはBCAA群で0.07±0.31 g/dl,非投与群で-0.13±0.29 g/dlであり,TACE1か月後と次回HCC治療時においてBCAA群で有意にAlb値の改善が見られた(P<0.05) .また,3か月後のChild-Pugh Scoreの変化量(後-前)も,BCAA群で-0.25±0.99,非投与群で0.12±2.00と,BCAA群でChild-Pugh Scoreの低下を抑えた(P<0.05).全生存期間では両群間での有意差は認めなかったが,BCAA製剤投与群では腹水増加あるいは浮腫増強までの期間を延長する傾向が見られた.【結論】BCAA製剤を投与している症例ではTACE後のAlb,Child-Pugh Scoreの低下を有意に抑え,腹水,浮腫の悪化までの期間を延長する傾向を認めた.
索引用語 肝細胞癌, BCAA