セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝不全・栄養療法4

タイトル 肝P-357:

肝硬変に対するカルニチン製剤の初期使用経験

演者 津端 俊介(新潟県立中央病院・消化器内科)
共同演者 小川 光平(新潟県立中央病院・消化器内科), 坂牧 僚(新潟県立中央病院・消化器内科), 有賀 諭生(新潟県立中央病院・消化器内科), 山川 雅史(新潟県立中央病院・消化器内科), 平野 正明(新潟県立中央病院・消化器内科)
抄録 【目的】近年サプリメントとして脚光を浴びているL-カルニチン(以下,カルニチン)は,ミトコンドリアの機能を保護することが知られている.このことが尿素サイクルを促進し,高アンモニア血症の改善を促すとされている.また,筋肉に取り込まれることで,とくに慢性腎不全患者の筋肉症状(こむら返りなど)を改善させることが知られている.今回我々は,肝性脳症やこむら返りの管理に難渋している肝硬変患者に対してカルニチン製剤の使用を試み,良好な初期効果を得ることができたので報告する.【方法】カルニチン製剤処方後3ヶ月以上が経過した肝硬変患者5例(年齢66.8歳,男性:女性 3:2).背景はC型3例,NASH1例,アルコール性1例で,症状は肝性脳症が3例,こむら返りが2例だった.肝性脳症例は,いずれもBCAA製剤やラクツロースの十分な内服を行っているにもかかわらずしばしば症状が発現し,適宜BCAA輸液製剤による治療を必要としていた.とくにうち1例は点滴治療から脱却できず,長期入院を余儀なくされていた.こむら返り例は,いずれも主に漢方薬の内服を行っていたが,しばしば症状の発現に悩まされていた.カルニチン製剤の初期用量は,こむら返りの1例で600mg/日(のちに900mg/日に増量),ほか4例は900mg/日だった.【成績】5例全例においてカルニチン製剤による有害事象の発現はなかった.肝性脳症3例においては,全例で脳症の発現頻度が減少した.長期入院となっていた症例も点滴治療から脱却し,退院が可能となった.3例とも治療3ヶ月後の血漿アンモニア値が治療前に比べて低下していた.こむら返りの2例についても,いずれも自覚症状発現の頻度が減少した.【結論】治療に難渋する有症状の肝硬変症例に対してカルニチン製剤を使用してみることは,意義があることと考えられた.今後さらなる使用経験の蓄積や長期予後などに対する検討に期待したい.
索引用語 カルニチン, 肝硬変