セッション情報 |
ポスターセッション(肝臓学会)
原発性肝癌-発癌3
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タイトル |
肝P-360:肝発癌に対する非環式レチノイドとアンギオテンシンII受容体阻害薬の併用効果と作用機序の検討
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演者 |
相原 洋祐(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科) |
共同演者 |
吉治 仁志(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 野口 隆一(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 浪崎 正(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 守屋 圭(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 堂原 彰敏(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 北出 光輝(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科) |
抄録 |
【目的】肝発癌過程に血管新生は必須であり,我々はこれまでに非環式レチノイド (ACR)とアンギオテンシンII受容体阻害薬 (ARB) が血管新生を阻害し,併用することでラット肝発癌を著明に抑制することを報告してきた.ACRの効果は様々な作用機序から検討されており,アポトーシス誘導によるclonal deletionについても多くの報告がなされている.今回,我々は血管新生への影響とともに重要なアポトーシスシグナルを担うCaspase-3の動態を解析し,両薬剤の作用機序につき詳細な検討を加えた.【方法】diethylnitrosamine (DEN)+部分肝切除モデルを用い,ACR (40mg/kg/day)投与群,ARB (Losartan: 30mg/kg/day) 投与群,両者併用群,非投与群の4群に分け GST-P 陽性前癌病変に対するこれら薬物の効果について検討した.血管新生はVEGFとCD31の発現を指標として評価し,Caspase-3 mRNA発現についても解析を加えた.さらにin vitroの実験系で,ACRの血管内皮細胞 (EC) 増殖に及ぼす効果について検討すると共に,MAPKの主要因子であるERK1/2への影響についても解析を加えた.【成績】ACR投与群,ARB投与群共に対照群に比し肝前癌病変の発生が有意に抑制されたが,併用群ではより強い抑制効果が認められ,対照群の約1/5にとどまっていた.CD31,VEGF mRNAは前癌病変とほぼ平行するように各群で抑制された一方,Caspase-3 mRNA発現は前癌病変発生と逆相関するように増加していた.In vitro実験系での血管内皮細胞の増殖およびERK1/2活性はACR,ARB処置群で対照群に比し抑制されており,併用群ではさらに強い抑制効果が認められた.【結論】ACRとARBは併用により,ECのERK1/2リン酸化抑制による血管新生阻害,およびCaspase-3誘導によるアポトーシス亢進を介して強力な肝前癌病変抑制効果を発揮する可能性が示唆された. |
索引用語 |
アンギオテンシンII受容体阻害薬, 非環式レチノイド |