セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-発癌4

タイトル 肝P-367:

C型肝炎ウイルスは肝細胞癌の抗癌剤抵抗性を増強する

演者 名和 誉敏(大阪大大学院・消化器内科学)
共同演者 巽 智秀(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)は,慢性肝炎,肝硬変から肝細胞癌(HCC)を引き起こす.HCC組織中には少数ながらHCV感染細胞が存在する.HCVレプリコン細胞において肝癌のstemnessが亢進するという報告があり,HCVの存在がHCCの進展や治療抵抗性にも関与する可能性がある.本研究では,HCVによるHCCの抗癌剤抵抗性への影響について検討を行った.【方法】Huh 7.5細胞にHCV-RNAをelectroporationにて導入し,HCV感染細胞を作製した.HCV感染細胞と非感染細胞に対して各種抗癌剤を添加し,Cell viabilityを評価した.またこれらの細胞において抗癌剤によるアポトーシスの誘導をウエスタンブロット法にて,抗がん剤の薬剤排出トランスポーターの発現量をリアルタイムRT-PCRにて評価した.細胞周期解析およびSide population分画の解析についてはフローサイトメトリーにて検討した.【成績】EpirubicinやSorafenibの添加では,HCV感染細胞は非感染細胞よりも有意にCell viabilityが高く,HCV感染細胞はこれら抗癌剤に抵抗性であった.HCV感染細胞では非感染細胞に比して,Epirubicin添加後のcleaved-caspase 3/7およびcleaved-PARPの発現誘導が弱く,逆にERKやAktなど抗アポトーシス経路の蛋白発現は有意に高かったことから,HCV感染細胞ではアポトーシスの誘導が抑制されていた.HCV感染細胞は非感染細胞に比して薬剤排出トランスポーターであるABCB1,ABCG2のmRNAの発現レベルが有意に高く,さらにHCV感染細胞ではG0/G1 phaseでの細胞周期静止が示唆された.またHCV感染細胞では非感染細胞に比してside population分画の有意な増加を認め,CD13,CD133などのHCCのCancer stem cellマーカーの発現の亢進を認めた.【結論】肝癌細胞はHCVの存在によりアポトーシスシグナルや薬剤排出トランスポーターを制御することで生物学的悪性度が増悪し,結果的にHCCの抗癌剤抵抗性を増大していることが示唆された.HCC治療後のHCV制御がその後の再発を含めた予後の改善に重要であると考えられた.
索引用語 HCV, 治療抵抗性