セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-診断3

タイトル 肝P-373:

慢性肝障害からの肝発癌におけるバイオマーカーの検討

演者 疋田 隼人(大阪大大学院・消化器内科学)
共同演者 巽 智秀(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景/目的】ウイルス性慢性肝炎やアルコール性肝障害,非アルコール性脂肪肝炎は肝細胞癌の高リスク疾患であり,共通して持続的な肝障害・ALTの上昇が認められる.我々は持続的肝障害が肝発癌を誘発することを証明してきた.肝発癌に関与する機構として,酸化ストレスの蓄積,遺伝子変異及びメチル化などが知られている.そこで,背景肝におけるこれらの変化が,発癌バイオマーカーとなり得るかを検討した.
【方法】持続的肝障害マウスとして,肝細胞特異的にアポトーシス抑制遺伝子であるMcl-1を欠損させたKOマウスを用いた.sequencerはIon Torrentを用い,メチル化の定量はBisulfite sequencing で行った.
【結果】Mcl-1 KOマウスはALTの持続的な上昇を認め,1年で69%,1.5年で100%に高分化肝細胞癌様の肝腫瘍形成を認めた.Mcl-1 KOマウスの非腫瘍部では,Wild type (WT)に比し8-OHdGが有意に高く,酸化ストレスの蓄積が認められた.そこで,Mcl-1 KOマウスに抗酸化剤であるNアセチルシステインの持続投与を行ったところ,肝障害の程度は改善しなかったが,8-OHdGは低下し,発癌率も1年で35%と有意に低下した.よって,8-OHdGは発癌バイオマーカー候補と考えられた.
次に,遺伝子の変異及びメチル化を,WTの肝臓,Mcl-1 KOマウスの非腫瘍部,腫瘍部の3群で検討した.P53及びbeta-cateninの全エクソンをdeep sequence解析を行ったが,WTに比し有意に高い遺伝子変異箇所は検出できなかった.またP53エクソン7全領域を1readで解析を行ったが,1readごとの変異塩基数に差を認めなかった.最後に,APC, P16, Gstp1, Hic1, Prdm2, Rassf1, Runx3, Socs11についてメチル化率を検討したところ,腫瘍部で10%以上のメチル化を認めるのはRunx3(15.1±5.4%)のみであった.Runx3のメチル化はWT(6.8±1.8%)に比し非腫瘍部(11.6±3.5%)でも有意に高く,発癌ポテンシャル指標の候補と考えられた.
【結語】肝組織における8-OHdGやRunx3のメチル化率が持続肝障害からの肝発癌バイオマーカーになる可能性が示唆された.
索引用語 肝細胞癌, 酸化ストレス