セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-診断4

タイトル 肝P-375:

当科のC型肝炎関連初発肝細胞癌患者の診断経緯の問題点

演者 岡野 淳一(鳥取大・機能病態内科)
共同演者 安部 良(鳥取大・機能病態内科), 藤瀬 幸(鳥取大・機能病態内科), 今本 龍(鳥取大・機能病態内科), 澤田 慎太郎(鳥取大・機能病態内科), 村脇 義和(鳥取大・機能病態内科)
抄録 【目的】われわれは,“科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン”で提言されている肝細胞癌(HCC)高危険群囲い込みによるHCC早期診断の遵守率が,特に市中病院で低いことを報告してきた.今回はC型肝炎ウイルス(HCV)による当科初発HCCに注目し,診断経緯の問題点を検討した.【方法】2009年1月から2012年12月までの4年間に当科入院となったHCV関連の初発HCC患者64例を対象とし,サーベイランスの有無,HCCの進行度,治療法と予後等を検討した.【成績】HCV関連初発HCC 64例の背景は,平均年齢71.1歳,男性/女性=43例/21例,自科通院/他院からの紹介=19例/45例,基盤が肝硬変40例(62.5%),インターフェロン(IFN)投与歴は24例(37.5%),うち5例がSVRであった.平均腫瘍径2.7 cm,AFP 569 ng/ml,腫瘍数は単発が40例(62.5%),2個が8例(12.5%),多発が14例(21.9%),びまん型が2例(3.1%)であり,診断契機となった手技は腹部エコー36例,腹部ダイナミックCT 23例,EOB-MRI 4例,胸部単純CT 1例であった.サーベイランス中のHCC診断は全体で42例(65.6%)であり,自科通院19例中18例(94.7%)はサーベイランス中にHCC診断がされていたが,他院45例のうちサーベイランス中のHCC診断は24例(53.3%)と少なかった.全64例の初回治療は,手術9例,経皮治療37例,TAE (I) 17例,無治療1例であった.また,診断から1年以内のHCC関連死亡が4例あり,全てサーベイランスがされていなかった他院症例であり,うち1例はSVR例であった.【結論】HCV陽性のHCC高危険群に対するサーベイランス遵守率が市中病院で特に低いことがHCC診断の遅れと早期死亡の最大の原因と思われた.加えてSVR後のHCCサーベイランス継続も重要と思われた.患者だけではなく医療従事者に対するHCC高危険群サーベイランスの重要性の認識がいまだ不十分であり,今後さらなる啓発活動が必要である.
索引用語 肝細胞癌, サーベイランス