セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-分子標的治療4

タイトル 肝P-393:

進行肝細胞癌に対するソラフェニブと肝動注化学療法の位置付け

演者 福林 光太郎(熊本大大学院・消化器内科学)
共同演者 田中 基彦(熊本大大学院・消化器内科学), 立山 雅邦(熊本大大学院・消化器内科学), 吉丸 洋子(熊本大大学院・消化器内科学), 川崎 剛(熊本大大学院・消化器内科学), 泉 和寛(熊本大大学院・消化器内科学), 溝部 典生(熊本大大学院・消化器内科学), 渡邊 丈久(熊本大大学院・消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】進行肝細胞癌(HCC)に対してはソラフェニブ(SFN)による治療が標準となっているが,本邦で広く行われている肝動注化学療法(HAIC)はいまだその推奨度は低い.そこで当科での進行肝細胞癌に対するSFN治療とHAICの治療成績から,進行肝細胞癌に対する両治療の位置づけについて検討した.【方法】4週以上治療継続可能であったSFN治療71例とHAIC125例を対象とした.治療効果は1ヵ月以降のModified RECIST (mRECIST)により判定した.生存期間(OS),病勢進行期間(TTP)はKaplan-Meier法,それぞれの寄与因子についてはCox回帰分析により統計学的に検討した.【結果】SFN治療の奏効率は13.6%で,HAICの奏効率は24.0%であった.OS中央値は,SFN治療 294日,HAIC 293日,TTP中央値はSFN治療 124日,HAIC 130日であった.SFN治療の有意な予後因子は腫瘍量(≦50%)(HR 0.26),PIVKA-II(≦1000mAU/ml)(HR 0.28)であった.SFN治療の病勢進行因子は腫瘍量(>50%)(HR 2.88),HBs抗原陽性(HR 3.75)であった.一方でHAICの予後因子は治療奏効(HR 0.193),腫瘍型(結節型)(HR 0.37),Alb(>3.5g/dL)(HR 0.496),ALT(≦48U/L)(HR 0.61)であった.またHAICの病勢進行因子は肝外転移有(HR 2.38),腹水有(HR 1.70),ALT(>58U/L)(HR 1.72)であった.両治療群の患者背景が異なることから,Vp,肝外転移,腫瘍型,Child-Pughを含めた因子による多変量解析で得られた傾向スコアで調整したSFN治療64例,HAIC76例で比較した.その結果OSには有意差はなかったが,TTPについてはHAIC群で有意に長く,特に肝外転移のない群で長かった.【結語】予後,TTPの面から高腫瘍量のHCCはSFNでの制御が困難である可能性が示唆された.患者背景を調整した両治療群の比較では,HAIC群で有意にTTPが長いことから,肝外転移のない進行例についてはHAICを第一選択とし,治療奏効が得られない場合はSFN治療への変更を考慮すべきと考えられた.
索引用語 ソラフェニブ, 肝動注化学療法