セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

自己免疫性肝疾患3

タイトル 肝P-404:

原発性胆汁性肝硬変の障害胆管におけるendocytosis機能の低下

演者 原田 憲一(金沢大・形態機能病理学)
共同演者 中沼 安二(金沢大・形態機能病理学)
抄録 【目的】原発性胆汁性肝硬変(PBC)の胆管ではtight junctionの発現低下が報告されており,paracellular pathwayを介した胆管周囲と胆汁との間の透過性亢進が示唆されている.一方,胆管細胞内でのtranscellular pathway (transcytosis)による分子透過性については詳細不明である.caveolin, clathrinは細胞膜陥没構造を形成する主要蛋白で,通常細胞膜に存在し,endocytosisの際には小胞を被覆する蛋白である.今回,PBCの胆管におけるcaveolin, clathrinについて検討し,胆管におけるendocytosis機能について解析した.【方法】PBC, C型慢性肝炎, 正常肝の肝組織切片を用いてcaveolin1, clathrin light chainの免疫染色を行い,胆管における発現について検討した.【成績】正常肝での胆管におけるcaveolin1の発現は主としてbasolateralの膜状に発現していたが,C型慢性肝炎やPBCの胆管では膜状の発現が不明瞭化し,細胞質の発現が目立った.しかし,PBCの障害胆管では膜発現のみならず細胞質の発現も減弱していた.一方,clathrinの発現は,正常肝の胆管の主として細胞質,一部apical側の膜にも認めた.C型慢性肝炎やPBCでも同様な染色パターンであり,PBCの障害胆管でも細胞質での発現は保持されていた.【考案】胆管におけるcaveolinはbasolateral側, clathrinはapical側に分布し,endocytosis関連分子の局在の相違が見られた.また,これらの細胞質内発現は細胞内に取り込まれた小胞被覆蛋白を見ており,生体内における胆管細胞のendocytosisを反映していると考えられた.さらに,clathrin を介したapical側からのendocytosisは疾患にかかわりなく恒常的に観察されたが,C型慢性肝炎, PBCではcaveolinを介したbasolateral側からのendocytosisも示唆された.しかし,PBCの障害胆管ではcaveolinの発現が低下しており,endocytosis機能障害による胆管周囲からの物質取り込み低下が胆管病変の病態形成に関与している可能性が示唆された.
索引用語 PBC, endocytosis