セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

自己免疫性肝疾患3

タイトル 肝P-405:

原発性胆汁性肝硬変の障害胆管におけるエネルギー代謝と細胞死との関連

演者 原田 憲一(金沢大・形態機能病理学)
共同演者 中沼 安二(金沢大・形態機能病理学)
抄録 【目的】原発性胆汁性胆管硬変(PBC)は慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)と胆管消失が特徴である.我々は,PBCのCNSDCではperoxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1α (PGC-1α)/estrogen-related receptor α (ERRα)を介した解糖系から脂肪酸分解系への代謝の変換が見られる事を報告してきた.今回,PBC胆管におけるエネルギー代謝と胆管細胞死との関連性を明らかにするため,酸化ストレスとアポトーシスについて解析した.【方法】PBCおよび対照群の肝生検材料を用いて,PGC-1α, ERRα,アポトーシスマーカー(ssDNA)の発現を免疫組織化学的染色にて検討した.また培養ヒト胆管細胞を用いて血清減量によるPGC-1α発現を誘導し,ミトコンドリア代謝活性をWST1活性にて,細胞増殖をDNA合成量にて検討した.さらにアポトーシス誘導性Fas抗体またはbcl-2 inhibitorによる細胞動態および酸化ストレスマーカー(8-OHdG), ssDNAの免疫染色を施行した.【成績】PBCのCNSDCではPGC-1α, ERRαの核発現を特異的に認めたが,PBCの正常胆管や対照疾患の胆管では核発現を認めなかった.また,ssDNA陽性の胆管細胞はPBCの障害胆管で散見され,対照群の胆管に比べて有意に高率であった.培養胆管細胞は血清減量によりPGC-1α発現亢進を来たし,WST1活性/DNA合成量にて算出される細胞あたりのミトコンドリア代謝活性の亢進が見られた.また,Fas抗体やbcl-2 inhibitorによる細胞数の低下が見られ,また8-OHdG発現細胞数も増加した.【結語】PBCではPGC-1α/ERRα発現を示すCNSDCが見られ,アポトーシス細胞も増加していた.また,培養胆管細胞をPGC-1α誘導によりエネルギー代謝を変換させた状態では,ミトコンドリア代謝活性の亢進に伴い酸化ストレスやアポトーシス感受性の亢進も見られた.PBCのCNSDCでは解糖系から脂肪酸分解系への偏位に伴いミトコンドリア代謝が亢進しているものの,酸化ストレスに起因するアポトーシス感受性も亢進しており,CNSDCから胆管消失を来す主要な要因と考えられた.
索引用語 代謝, アポトーシス