抄録 |
【はじめに】進行型肝細胞癌(pHCC)に対する術前検査で発見された乏血性早期HCC(eHCC)の肝切除時同時治療が術後成績に与える影響は明らかでない.今回,EOB-MRIの導入前後で,eHCCの診断能とeHCCをpHCC切除時に同時治療した後の生存率を比較検討した.【対象と方法】2008年のEOB-MRI導入後3年間のHCC治癒切除症例77例(施行例)と,それ以前の3年間の治癒切除例70例(非施行例)を対象とした.術前画像診断はEOB-MRI以外は全例でエコー,造影CT,血管造影,血管造影下CT(従来画像)を実施した.施行例では切除対象のpHCC以外に従来画像およびEOB-MRIで発見されたeHCCは可及的に切除または焼灼治療した.全経過で術後経過観察は同様に実施し,多血性病変の検出時を再発診断時とした.【結果】EOB-MRI施行77例と非施行例70例で,DCPは非施行例で高値であった(p=0.02)以外背景に差は認めなかった.eHCCの発見症例数は施行例で有意に多かった(17 vs 6,p=0.04).無再発生存率は1年,3年,4年の順に施行例が81.4%,63.7%,40.4,非施行例が82.1%,41.5%,30.3%と1年以内の再発率は同等であったが,2年以降は施行例で良好で,有意差を認めた(P=0.01).一方,累積生存率は施行例が98.7%,89.9%,78.2,非施行例が97.0%,86.3%,83.2%と現時点で有意差を認めなかった(P=0.98).【考察】今回の検討でEOB-MRI施行によりeHCCの発見率が高まり,これらの同時治療によりeHCC の多血化によるMC再発が抑制され,切除後の無再発生存率が向上するが,累積生存率に差がないのはpHCCの影響がより強いためと推定した. |