セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-集学的治療 1

タイトル 外P-67:

vp3,4肝細胞癌の門脈腫瘍栓に対する術前放射線治療の有効性の検討

演者 柿坂 達彦(北海道大大学院・消化器外科学分野I)
共同演者 神山 俊哉(北海道大大学院・消化器外科学分野I), 横尾 英樹(北海道大大学院・消化器外科学分野I), 折茂 達也(北海道大大学院・消化器外科学分野I), 若山 顕治(北海道大大学院・消化器外科学分野I), 敦賀 陽介(北海道大大学院・消化器外科学分野I), 蒲池 浩文(北海道大大学院・消化器外科学分野I), 武冨 紹信(北海道大大学院・消化器外科学分野I)
抄録 【背景】門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌は, 手術治療による完全切除を行っても門脈血流を介した肝内転移を発症しやすい.特に腫瘍栓が門脈一次分枝(vp3), 門脈本幹(vp4)に及んだ症例は予後不良である.これらの症例に対して長期予後を期待できる標準治療は確立していない.今回, vp3,4症例において腫瘍栓に対する術前放射線治療の有効性を検討した.【方法】1990年~2010年の間, 当科での肝細胞癌初回手術症例842例中, vp3,4症例は60例(7.1%)であった.腫瘍栓に放射線治療(30~36Gy/10~12f)を施行後, 肝切除を行った症例(RT群)は26例であり, 術前放射線治療を施行せず肝切除を行った34例(非RT群)と全生存期間, 無再発生存期間, 予後因子を比較検討した.【結果】RT群は非RT群と比較して, 年齢, 性別, ウイルス感染, 肝予備能, AFP, 腫瘍サイズ, 腫瘍個数, 分化度, 静脈浸潤, 背景肝, 術前TACEの有無, 術後肝動注療法の有無といった背景因子に差を認めなかったが, 手術時間, 出血量が有意に少なかった.全vp3,4症例の5年生存率は23.7%であった.RT群と非RT群の5年生存率はそれぞれ40.3%, 11.8%であり, 有意に生存期間の延長を認めた(p=0.0034).生存期間に寄与する因子として, 術前放射線治療のみが有意な因子として挙げられた(オッズ比0.41, 95%信頼区間 0.22-0.75).stage IVB症例を除いたRT群24例, 非RT群32例において, 無再発生存期間の中央値はそれぞれ6.3か月, 3.7か月で, 有意に無再発生存期間の延長を認めた(p=0.02).無再発生存期間に寄与する因子として, 多変量解析でT-bil(オッズ比0.44, 95%信頼区間 0.23-0.84), 術前放射線治療(オッズ比0.46, 95%信頼区間 0.23-0.88)が有意な因子として挙げられた.【結論】vp3,4症例においてRT群は有意に予後良好であった.高度門脈腫瘍栓に対して術前放射線治療施行後に手術を行う治療戦略は非常に有効であり, 標準治療とすべきであると考えられた.
索引用語 肝細胞癌, 門脈腫瘍栓