セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-術後合併症 2

タイトル 外P-81:

肝細胞癌切除術における術中大量出血例の検討

演者 福永 潔(筑波大・消化器外科)
共同演者 高野 恵輔(筑波大・消化器外科), 橋本 真治(筑波大・消化器外科), 大城 幸雄(筑波大・消化器外科), 田村 孝史(筑波大・消化器外科), 久倉 勝治(筑波大・消化器外科), 榎本 剛史(筑波大・消化器外科), 稲川 智(筑波大・消化器外科), 小田 竜也(筑波大・消化器外科), 大河内 信弘(筑波大・消化器外科)
抄録 【目的】肝細胞癌切除術において,出血は術後肝不全のリスクである.肝細胞癌切除術における術中大量出血例を検討し,その原因と対策を考察した.【方法】当院で2003年10月から2012年9月までの9年間に肝細胞癌に対して肝切除術を行った139例を対象とした.出血量2,000g以上を大量出血と定義した.大量出血例は16例(12%)であり大量出血群とした.これらを出血量2,000g未満の123例(対照群)と比較し,患者因子,腫瘍因子,手術因子について検討した.【成績】単変量解析では大量出血の危険因子はChild-Pugh grade B/C,Stage IV,最大腫瘍径8cm以上,術式の5つであった.術式については中央2区域切除,内側区域切除,前区域切除,後区域切除,S8亜区域切除が大量出血の危険因子であった.多変量解析にて最大腫瘍径8cm以上と術式の2つの因子に有意差がみられた.個々の症例検討により,上記因子に加え,門脈腫瘍栓(Vp3,4),グリソン枝の解剖学的変異,ラジオ波焼灼術後の肝切除,肝静脈を肝細胞癌から広く剥離する必要がある場合が大量出血に関与していると考えられた.【結論】大量出血の危険因子は肝機能ではなく,腫瘍因子と術式であった.大きい肝細胞癌を区域切除などの比較的小さい肝切除量の術式で切除する場合に大量出血となる危険が高いことが分かった.腫瘍が切離線に近く視野展開が難しいことなどが原因と考察した.慢性肝疾患を背景とする肝細胞癌の切除術では,術後肝不全を防ぐために残肝容積をできるだけ温存することを考える.しかし,大きな肝細胞癌の場合,肝予備能が許容するのであれば,比較的大きな切除を行う事が大量出血の予防に寄与すると考えられた.そのために残肝容積を正確に把握する必要があり,現在,3Dシミュレーションが大きな役割を果たしている.術中大量出血は術前の綿密な手術計画により予防可能であると考えられた.
索引用語 肝細胞癌, 肝切除