セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-術後合併症 2

タイトル 外P-83:

肝切除術後の腹腔内癒着に対する生体吸収性癒着防止バリアの有用性に関する検討

演者 清水 篤志(東京大附属病院・肝・胆・膵外科)
共同演者 長谷川 潔(東京大附属病院・肝・胆・膵外科), 増田 晃一(東京大附属病院・肝・胆・膵外科), 青木 琢(東京大附属病院・肝・胆・膵外科), 阪本 良弘(東京大附属病院・肝・胆・膵外科), 菅原 寧彦(東京大附属病院・肝・胆・膵外科), 國土 典宏(東京大附属病院・肝・胆・膵外科)
抄録 【目的】肝腫瘍に対する肝切除の問題点として,高い再発率が挙げられる.再発時の繰り返し切除の有用性が指摘されているが,その際に腹腔内癒着による手技の煩雑化や手術時間の延長等が問題となる.癒着防止バリアである合成吸収性癒着防止材(Seprafilm)が,肝切除後の癒着に対する軽減効果を示すか否かを,前向き臨床試験にて検討した.【対象】当大学肝胆膵外科において,2010年1月から2011年12月までの2年間,原発性肝癌および転移性肝腫瘍に対する肝切除症例に対しSeprafilmを使用した.術後3年間を追跡期間とし,その間に再発し再肝切除を行った39例および,同期間中に施行した複数回目の肝切除のうち既に前回肝切除時にSeprafilmを使用していた12例も併せて評価対象とした(Seprafilm群,n=51).比較対照群は,2008年1月から2009年12月までの2年間で施行した複数回目の肝切除症例のうち,以前にSeprafilmを使用していなかった症例とした(Control群,n=105).【方法】Seprafilm群においては前回肝切除時の閉腹直前に,Seprafilm(12.7×14.7cm)を肝門部と肝表面に1枚ずつ留置した.Seprafilm群とControl群との腹腔内癒着の比較については,主要評価項目を癒着剥離時間(手術開始から肝離断開始までの所要時間)とした.副次評価項目は手術開始から肝離断開始までの出血量,総出血量,総手術時間,術後1日目のドレーンビリルビン値,術後3日目の血清CRP値,術後イレウスの有無,術後胆汁漏の有無とした.【結果】手術開始から肝離断開始までの所要時間(以下中央値[範囲])は,Seprafilm群189分(50-441):Control群228分(60-596)と有意差を認めた(P<0.05).肝離断開始までの出血量は,Seprafilm群125mL(0-980):Control群190mL(0-1790)(P=0.25)であり,他の評価項目を含め有意差は認めなかった.【結論】Seprafilmを肝切除時に使用することが,将来の再肝切除時において癒着剥離に要する時間の短縮に寄与する可能性が示唆された.
索引用語 癒着, 肝切除