抄録 |
【背景と目的】各種幹細胞を用いた糖尿病の再生医療研究がおこなわれているが, 未だ臨床応用には至っていない. 我々はこれまで汎幹細胞マーカー(CD133, mouse prominin1)を用いて膵組織幹細胞を分離し報告してきた. 今回は, より効率よい膵ベータ細胞への分化誘導を検討するため, CD133ノックアウト/GFPノックインマウスを作成し検討した.【方法】(1)mouse CD133のexon1にGFPを組み込んだ相同組換えベクターを作成し, キメラマウスを得たのち, C57BL6Jマウスに10回バッククロスして実験に用いた.(2) CD133+/+, CD133+/GFP, CD133 GFP /GFPの体重変化や組織重量を測定した. (3) CD133+/GFPマウスを用いて消化器組織(肝臓, 膵臓, 小腸)内でGFP免疫染色により, その局在を検討した.(4) CD133+/GFPマウス胎児の膵臓上皮細胞を, FACSによりGFP陽性細胞とCD133陽性細胞に分離した.(5) CD133+/GFPマウスのGFP陽性細胞を既報の条件で培養した. さらに, growth factor存在下で培養し, その遺伝子変化をリアルタイムPCR法と免疫染色法で検討した.【成績】(1) CD133+/+, CD133+/GFP, CD133 GFP /GFP のマウス間で体重増加や組織重量に有意差を認めなかった.(2) 成体CD133+/GFPマウスでは肝臓では細胆管, 膵臓ではterminal duct, 小腸ではcryptにGFPが強発現していた.(3)FACSによる検討では, GFP陽性細胞とCD133陽性細胞は一致しており, このマウスの有効性が確認できた.(4)Wnt agonist存在下では, 膵組織幹細胞は未分化な状態を維持でき, 血清存在下では成熟細胞へと分化することが明らかになった.【結論】今回の検討から, 我々の作成したマウスはGFPを指標にして膵組織幹細胞のlineageやcell fateを追跡するために有用なツールになりうる. |