セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

膵臓-基礎研究

タイトル 外P-107:

ヒト膵癌細胞株を用いた癌幹細胞が豊富な細胞集団の誘導

演者 吉村 清(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
共同演者 渡邊 裕策(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 恒富 亮一(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 新藤 芳太郎(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 前田 祥成(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 松井 洋人(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 前田 訓子(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 橋本 憲輝(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 鈴木 伸明(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 上野 富雄(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 山本 滋(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 吉野 茂文(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 硲 彰一(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 岡 正朗(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
抄録 (はじめに)癌幹細胞(CSC)は抗癌剤や放射線に強い耐性を有し,癌の再発・転移に深く関与していると考えられており,癌根治に向けては,CSCの細胞学的特徴や維持機構を明らかにし,CSCを標的とする治療法を開発する必要がある.より多くの癌幹細胞を安定して確保することでこの研究は飛躍的に進む可能性がある.そこで我々は癌細胞をCSCへと誘導する方法を確立した.この誘導したCSCの細胞学的特徴を検索したので報告する.(方法)当科で樹立したヒト膵癌細胞株を当科で開発した神経刺激因子をくわえた幹細胞用無血清培養液を用い培養した.この方法で得られた細胞を,フロサイトメトリーによる表面マーカーや機能の発現,マウスによる腫瘍形成能,RT-PCRによる幹細胞関連遺伝子や間葉系遺伝子の発現を親株癌細胞と比較した.またBio-Plexを用い癌とCSCにおける培養液中のサイトカイン,ケモカインの違いを探索した.(結果)膵癌幹細胞マーカーであるCD24+/CD44+/ESA+細胞の割合が親癌で約0.6%であったが,我々の方法で誘導すると33.8%に増加しALDHの発現も約4倍増加した.細胞周期の検索ではG0/G1にとどまる細胞の割合が,31%から52%へと増加した.誘導した細胞を免疫不全マウスへ1000個移植し腫瘍が形成されることを確認した.同細胞は間葉系マーカー(VIM,FN1,SNAIL1,SLUG,ZEB1,SIP1),stemnessマーカー(KIT,ALDH1A)の発現が親癌よりも高く,上皮間葉転換(EMT)を起こし,幹細胞様性質を獲得していることが示唆された.誘導した細胞を維持している培養液中にはTGF-βが多く認められた.(まとめ)膵癌細胞株より膵CSCを誘導する方法を確立した.この誘導して得られたCSCはEMTを介していることが示唆された.(結語)これらの知見をもとにCSCの特性をさらに探究することでCSCに対する新規治療法の確立を目指している.
索引用語 癌幹細胞, 膵癌