セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

膵臓-症例 1

タイトル 外P-123:

反復性の破裂により腹腔内出血・腹膜炎を繰り返した膵炎に伴う脾仮性嚢胞の1例

演者 加藤 健宏(静岡済生会総合病院・外科)
共同演者 寺崎 正起(静岡済生会総合病院・外科), 岡本 好史(静岡済生会総合病院・外科), 鈴村 潔(静岡済生会総合病院・外科), 神谷 忠宏(静岡済生会総合病院・外科)
抄録 緒言:膵炎に伴う脾病変はアルコール性慢性膵炎の2%に合併し,脾仮性嚢胞・脾膿瘍・被膜下血腫・脾破裂・仮性動脈瘤等が報告されているが,本邦では比較的まれである.症例:症例は46歳男性で,既往に急性膵炎(4年前)・出血性胃潰瘍(1年前)がある.来院5時間前に突然強い左背部痛を自覚し当院救外来急を受診された.来院時バイタルサインは安定していたが,左上腹部に筋性防御を伴う激しい圧痛・自発痛を認めた.腹部造影CTでは左上腹部を中心に腹水を認め,膵尾部・脾臓に複数の嚢胞性病変を認めた.腹水穿刺を施行し血性であったが,バイタルサインが安定しており,CT上 evtravasation認めず厳重な観察下で保存的加療とした.以降出血の増大なく精査とした.腹部CT angiographyでは脾動脈末梢の枯れ枝状の不整狭窄・直径5 mm程度の動脈瘤を認めた.症状は数日で軽快し患者の強い希望により退院,2ヵ月後に血管造影を施行したが動脈瘤は消失していた.その後経過観察としていたが3ヶ月後に再度同様の腹膜炎で入院,手術を勧めたが患者の拒否により保存的加療とした.初回入院6カ月後に手術を施行した.術中所見は,脾臓周囲に多房性に被包化された腹水・脾臓から突出する複数の嚢胞性病変を認め,膵は硬く慢性膵炎の所見で膵尾部・脾・弓隆部が炎症により一塊となっていた.膵体尾部脾切除を施行し,術後第8病日合併症なく軽快退院した.切除標本肉眼所見は,膵尾部・脾臓に血腫と膵液性嚢胞が混在していた.病理組織所見は,嚢胞性病変は上皮成分を有しない仮性嚢胞で腫瘍性病変を認めなかった.以上より本症例の病態は,膵炎に伴う膵尾部脾仮性嚢胞・血腫の反復性破裂と診断した.結語:比較的まれではあるが,膵炎既往のある患者の脾病変の鑑別に本疾患を考慮することが肝要と思われた.
索引用語 脾嚢胞, 膵炎