セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

膵臓-症例 2

タイトル 外P-129:

極めて稀な滑膜肉腫膵転移の1切除例

演者 藤崎 洋人(東京歯大市川総合病院・外科)
共同演者 松井 淳一(東京歯大市川総合病院・外科), 庄司 高裕(東京歯大市川総合病院・外科), 浅原 史卓(東京歯大市川総合病院・外科), 原田 裕久(東京歯大市川総合病院・外科), 佐藤 道夫(東京歯大市川総合病院・外科), 安藤 暢敏(東京歯大市川総合病院・外科)
抄録 症例は43歳女性.2008年3月に左肩関節から前胸部の滑膜肉腫に対して腫瘍摘出術,術後放射線照射(69Gy)が施行された.以降は定期検査が行われ,2012年7月の腹部CTで膵頭部に4.5cm大の腫瘍性病変を指摘された.Dynamic studyでは早期相で濃染し後期相まで造影効果が遷延していた. MRIではT1/T2強調像で非特異的な腫瘍信号を呈し,拡散強調像では著明な信号低下を認めた.CT,MRIともに腫瘍辺縁に嚢胞性病変を認めた.腹部血管造影ではASPDA,PSPDAから栄養される腫瘍濃染像を認め,PETでは淡い集積を示した.各種画像検査ではその他に明らかな病変は認めなかった.内視鏡的には十二指腸下行脚に膵頭側から壁外性圧排を認め,粘膜面にびらんを伴い,主乳頭は背側に圧排されていた.ERPでは主膵管が膵頭部で腫瘍による圧排を認めたが,明らかな膵管拡張や狭窄,造影剤のpoolingは認めなかった.以上より滑膜肉腫の膵転移と診断したが,膵神経内分泌腫瘍や漿液嚢胞性腫瘍,十二指腸GISTなどが鑑別にあげられた.2012年9月,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術,今永法再建を施行した.腫瘍は膵頭部腹側で前方へ突出するように位置し十二指腸を外側に圧排していたが,周囲臓器への浸潤傾向は認めなかった.術後は胃排泄遅延を認めたが保存的に軽快した.病理では膵頭部実質内に4.5x3.8cmの境界明瞭な白色調腫瘤を認め,ミクロでは紡錘形異型細胞の密な錯綜増殖が認められ,核分裂像が多数認められる肉腫の像を呈していた.また腫瘍内に既存の膵組織構造を認め,滑膜肉腫の膵転移と診断した.術後に補助化学療法を施行し,現在外来経過観察中である.滑膜肉腫は局所再発や血行性肺,骨転移,リンパ節転移を来し予後不良とされる.本例のように初回単発性に膵転移で再発した症例は稀であり,それを切除し得た報告はこれまで認められない.文献的考察を加えて報告する.
索引用語 滑膜肉腫, 膵転移