抄録 |
腹腔鏡(補助)下肝切除は保険適応となり,各施設で標準化に向けて適切な手術手技が求められる.今回われわれは2006年12月から2013年2月までに当科で実施した腹腔鏡(補助)下肝切除55例の手術成績を検討し,肝硬変の有無や切離部位に応じた適切な肝切離手技の標準化に向けての考察を行った.55例の内,原発性肝癌38例では,術前ICG15分値は平均23.7%(6.2-56.3%),Child-Pugh scoreはClass A 24例,Class B12例,腫瘍径は平均2.3cm(1.0-6.0cm)であった.33例に肝部分切除(S2,3,4,5,6,7,8),4例に外側区域切除を行ったが,9例にHALSを併用した.同時手術として胆嚢摘出術4例,胃部分切除術1例,RFA4例を行った.手術時間は平均183分(40-345分),出血量は平均105ml(5-448ml),1例が肝腎症候群により死亡した.一方,転移性肝癌15例と胆嚢癌(腫瘍)2例では14例に肝部分切除(S1,S2,3,4,6,7,8,肝床部),4例に外側区域切除,1例に後区域前背側区域切除を行った.同時手術として直腸切断術1例,S状結腸切除術2例,右結腸切除術1例,人工肛門閉鎖術1例,胆嚢摘出術1例を行った.手術時間は平均186分(70-380分),出血量は平均45ml(5-340ml),術後合併症はなかった.肝切離に際して,硬変肝では牽引用の糸による緊張や助手の器具との協調で切離面を展開することが重要で,肝臓が非常に硬く切離面の展開が困難な場合や後区域またはS8の切離ではHALSの併用も有用であった.切離方法としては,VIO systemのBiclampで前凝固しながら破砕し,Vessel sealing systemやlaparoscopic coagulation shearsで切離する方法が有効かつ安全であった.最近はCUSAにVIO systemを併用することで,開腹に準じ初心者でも安全に施行可能となってきた.肝実質が薄くなればstaplerを用いることも有効であった.腹腔鏡下肝切除の切離手技の標準化に向けてはBiclampとCUSAの使用が有用である. |