セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-鏡視下手術 3

タイトル 外P-179:

腹腔鏡で変わった系統的肝切除の標準的アプローチ

演者 本田 五郎(がん・感染症センター都立駒込病院・外科)
共同演者 倉田 昌直(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 小林 信(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 坂元 克考(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 奥田 雄紀浩(がん・感染症センター都立駒込病院・外科)
抄録 【はじめに】当院では2008年8月より完全鏡視下肝切除を導入し,腹腔鏡独特の尾側からの視野を生かした標準手技を用いて系統的肝切除術を積極的に行ってきた.【標準手技】カメラ用ポートは臍に,肝切device用ポートは季肋下に並べる.Pringle手技用のtourniquetを設置し,術野がdryに保てない場合は間欠遮断する.肝離断には前凝固は行わず,先端で通電(ソフト凝固)可能なCUSAを用いて脈管を丁寧に露出する.葉切除や区域切除では流入血行を先行処理した後に,肝前縁を持ち上げて肝下面の肝門側から肝表に向かって区域間を開く.主肝静脈はほぼ全長に渡って露出するが,区域間の比較的IVC寄りで“腹”を見つけて露出し,CUSAをIVC側から末梢側に向けてswingすることで静脈枝分岐部の股裂き損傷を回避しつつ迅速に肝静脈の露出と実質の離断を進める.左葉切除時の中肝静脈はArantius管を左肝静脈接続部で離断した後に,内側区域切除時の中肝静脈や前区域切除時の右肝静脈は左側の離断をすませた後に,切除肝を頭腹側に持ち上げて根部側から末梢側に向かって露出する.【成績】2013年3月までに右葉切除4例,左葉切除5例,外側区域切除8例,内側区域切除4例,前区域切除5例,後区域切除10例,亜区域切除19例(計55例)を完全鏡視下に行った.主な術式別の最短手術時間は右葉4時間38分,左葉3時間59分,外側区域1時間27分,内側区域4時間38分,前区域4時間29分,後区域5時間17分,55例の平均出血量は286mlで,開腹移行はS8亜区域切除の1例であった.主な術後合併症は門脈血栓1例,肺動脈塞栓1例,腹水貯留遷延1例で胆汁瘻や術後出血は無かった.手術関連死亡は無く,術後平均在院日数は10日であった.【まとめ】特に葉切除や区域切除ではGlisson系脈管の同定と離断の手技も比較的単純であり,切離面の方向が一定かつ単純なため,腹腔鏡独特の視野を生かした我々の標準手技により多くの症例で開腹手術以上のoutcomeを得ることが可能である.
索引用語 腹腔鏡下肝切除, 系統的肝切除