共同演者 |
松田 悟郎(国立横浜医療センター・外科), 齊藤 修治(国立横浜医療センター・外科), 清水 哲也(国立横浜医療センター・外科), 稲垣 里沙(国立横浜医療センター・外科), 杉政 奈津子(国立横浜医療センター・外科), 山本 悠史(国立横浜医療センター・外科), 松木 裕輝(国立横浜医療センター・外科), 新野 史(国立横浜医療センター・臨床検査科) |
抄録 |
【はじめに】肝膿瘍に対しては,通常,抗菌薬投与と経皮的ドレナージが行われ,大多数は軽快する.しかし,まれに肝切除を含む緊急手術を要する症例が存在する.【目的】緊急手術を要した肝膿瘍症例(本症)を検討した.【対象,方法】最近3年間に経験した本症7例を対象とした.男: 女=5: 2,年齢: 28-70歳,平均60.4歳だった.これらの,原疾患,膿瘍の原因,併存疾患,治療経過,細菌検査結果,治療方法,治療成績について検討した.【結果】(1) 原疾患: 肝嚢胞1,胆嚢炎2,肝細胞癌1,外傷1,原疾患なし2だった.(2) 膿瘍の原因: 肝嚢胞の感染1,胆道系感染2,血流障害2,不明2だった.(3) 併存疾患: 糖尿病2,潰瘍性大腸炎,大腸亜全摘後1,特発性門脈圧亢進症,Banti症候群,脾摘後1,アルコール依存症1,深部静脈血栓1,なし1だった.(4) 前治療: 全例,何らかの前治療ののち,当科に紹介となった.(5) 手術適応: 経皮的ドレナージの効果不十分1,膿瘍の原因除去(胆嚢滌除)2,膿瘍の性状から経皮的ドレナージでは効果不十分と予測したため4だった.(6) 手術方法: 肝切除術5,胆嚢摘除,膿瘍腔洗浄ドレナージ,胆管ドレナージ2だった.(7) 細菌検査: 膿培養は6例に施行し,K.Pneumoniae 1,MRSA 1,菌を認めず4だった.(8) 術後経過: 肝切除5例は全例軽快退院した.1例に創感染を認めた.胆嚢摘除,膿瘍腔洗浄ドレナージ,胆管ドレナージの1例は軽快退院した.他の1例は潰瘍性大腸炎,大腸亜全摘後だった.術前の血液培養でMRSAが検出され,術後も臓器不全を併発し,術後24病日,多臓器不全で死亡した.【結語】肝膿瘍は抗菌薬投与,経皮的ドレナージで軽快する症例が大多数であるが,時に外科切除が必要な症例も存在する.時期を逸しないことが肝要である. |