セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-症例 2

タイトル 外P-202:

原発巣切除の7年6ヶ月後に再発した右肝管浸潤を伴う直腸癌肝転移の1例

演者 秋山 裕人(旭労災病院・外科)
共同演者 井垣 啓(旭労災病院・外科), 藤田 建(旭労災病院・外科), 馬場 泰輔(旭労災病院・外科), 小川 敦司(旭労災病院・外科), 高野 学(旭労災病院・外科)
抄録 (はじめに)肝腫瘍の診断において,肝内胆管癌と転移性肝癌の鑑別は時に困難である.肝内胆管癌では肝内胆管拡張が診断の一助とされるが,近年では大腸癌肝転移に伴う肝内胆管拡張の報告例が増加している.今回直腸癌手術の7年6ヶ月後に切除しえた右肝管浸潤を来たした肝転移を経験したので報告する.(症例)75歳男性.2005年7月にRb直腸癌のため直腸切断術を施行した.腫瘍は6cmで中分化型腺癌,pA,ly0,v1,pN0であった.術後補助化学療法としてl-LV+5FU療法(RPMI)を10コース施行した.その後再発はなかったが術後5年目以降も通院継続していた.術後7年4ヶ月後(2012年11月)の採血でCEA値の上昇が見られたため画像検査を施行し,肝内胆管拡張を伴う32mm大の腫瘍を肝右葉前区域と後区域グリソン分岐部に認めた.MRCPでは右肝管浸潤が明瞭であった.胆管細胞癌にしてはCA19-9が正常,造影CTで平衡相の遅延性濃染がみられず,直腸癌肝転移と診断した.ICGR15は26.4%,K値は0.105と不良であったが,肝右葉の胆汁排泄不良が原因と考え,2013年1月に肝右葉切除術を施行した.切除標本の検討で肝腫瘍は直腸癌転移と診断され,これは右肝管粘膜を置換するように進展し,先進部では8mmの長さのポリープ状に発育していた.術後経過は良好で術後10日目に退院した.(考察)大腸癌肝転移巣の組織学的検討では胆管浸潤は微視的に40%,肉眼的に10%程度にあり,後者は前者や胆管浸潤のない症例よりも遅発性に再発し,予後も良好とされる.臨床的に画像上で胆管拡張を伴う大腸癌肝転移報告例は増加しているが,文献的に原発巣切除5年以降の胆管浸潤を伴う大腸癌肝転移切除例は本邦では本例を含み3例のみであった.本例では診断時も無症状であり,通院を継続していなければ,広範な肝門部胆管浸潤を来たしてからの来院となり,診断治療に難航した可能性が高いと考えた.
索引用語 大腸癌肝転移, 胆管浸潤