セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-症例 2

タイトル 外P-204:

24歳男性に発症したFibrolamellar hepatocellular carcinomaの1例

演者 池原 康一(中部徳洲会病院・消化器科)
共同演者 江口 征臣(中部徳洲会病院・消化器科), 仲宗根 由幸(中部徳洲会病院・消化器科), 玉榮 剛(中部徳洲会病院・消化器科)
抄録 【はじめに】Fibrolamellar hepatocellular carcinoma(以下,FLC)は,1956年にEdomondsonにより初めて報告され,本邦の原発性肝癌取扱い規約では肝細胞癌特殊型に分類されている.欧米では原発性肝癌の1~2%程度であるが,本邦ではさらに少なく,非常にまれである.われわれはFLCの1例を経験したので報告する.【症例】24歳男性.右季肋部痛を主訴に内科外来を受診.腹部エコー検査および腹部CT検査にて肝臓に巨大な膿瘍を認めた.肝膿瘍を疑い入院となる.内科にて膿瘍ドレナージを施行するもドレナージできず.腫瘍を疑いMRI施行され,肝腫瘍と診断された.肝炎ウイルス抗原および抗体は正常,術前の腫瘍マーカーも正常であった.術前にはFLCの認識なく,術中迅速病理診断を行い良悪性の鑑別を行う方針となった.術中迅速病理診断にて結合組織に富む腫瘍性病変であり,悪性を疑う細胞が認められず,結節性病変と診断した.手術は前区域切除を施行した.術後,固定標本による病理組織検査結果ではFLCの診断.文献的検索ではしばしばリンパ節転移を伴うとの報告があり,再手術し肝門部から腹腔動脈根部までのリンパ節の廓清を追加したが,リンパ節転移は認めなかった.術後は経過良好,合併症なく退院となった.【結語】FLCは肝細胞癌の特殊型であり,非常にまれである.特徴として,10~20歳代の若年者に多く発症する傾向がみられる,肝硬変がないなどが挙げられる.病理学的には「黄白色調の充実性の腫瘍で,好酸性顆粒状の豊富な胞体を持つ癌細胞は索状,あるいはシート状に配列し,その間に層状構造を示す硝子様結合織の増生」が見られることが特徴とされる.今回も術中迅速病理検査にて繊維成分が多くみられ,悪性細胞が確認されなかったことより,良性腫瘍と診断した.しかし,後方視的に考察すると,臨床所見および画像所見はFLCに特徴的であり,FLCが念頭にあれば,術前診断も可能であったと考える.本邦報告例を参考にして,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 Fibrolamellar hepatocellular carcinoma, 若年者肝臓癌