セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-症例 3

タイトル 外P-206:

肝細胞癌破裂後9年目の腹膜播種に対する1切除例

演者 小倉 康裕(県立宮崎病院・外科)
共同演者 田中 宏明(県立宮崎病院・外科), 中村 豪(県立宮崎病院・外科), 別府 樹一郎(県立宮崎病院・外科), 下薗 孝司(県立宮崎病院・外科), 上田 祐滋(県立宮崎病院・外科)
抄録 肝細胞癌破裂術後9年目に初めて腹膜播種再発をきたし外科的に切除しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は80歳女性.70歳時に肝細胞癌破裂に対しTAE止血後に肝部分切除術(S4a),胆嚢摘除術を施行されていた.73歳時に慢性腎不全で血液透析導入となり,79歳時の2012年7月前医での定期腹部CTにて5.5cm程の左側腹部腫瘤を指摘され当科紹介となった.特に症状なくマーカーも正常であったが,破裂の既往があったことから肝細胞癌の腹膜播種が疑われた.他遠隔転移を認めなかったことから手術を検討した.しかし2012年8月慢性硬膜下血腫を発症し穿頭血腫除去術を施行され手術延期となった.同年10月の腹部CTにて左側腹部腫瘍のサイズが7cmに増大し,1cm程の新たな腫瘤も出現した.PIVKAII上昇も初めて確認され11月に手術予定としたが,今度は間質性肺炎を発症し再度手術延期となった.2013年1月の腹部CTでは腹腔内腫瘍は12cm,3cmとさらに増大していた.本人の強い希望があり,2013年2月に手術を施行した.左側腹部に弾性軟で直径12cm程の大網内にある孤立性腫瘍を確認し摘出した.その頭側に3cm大の弾性軟の腫瘍1個と副脾を認め同様に摘出した.なお肝内再発や他明らかな腹腔内腫瘤を認めなかった.病理組織検査では,共に肝細胞癌の腹膜播種と診断された.術後は合併症なく経過良好で,術後21日目に透析継続のため内科転科となり,PIVKAIIも正常値となった.肝細胞癌の腹膜播種再発の頻度は少ないものの破裂後症例の場合はリスクが高くなる.しかし播種病巣は他消化器癌とは違い限局した結節病変を呈することが多く切除により生存延長も得られる場合もある.稀ではあるが本症例のように9年という長期の再発期間を要するものもあることから,厳重な長期経過観察と早期治療が重要と考える.
索引用語 肝細胞癌, 腹膜播種