セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-基礎研究 1

タイトル 外P-216:

抗癌剤耐性を示すヒト肝細胞癌細胞株から誘導した癌幹細胞様細胞

演者 恒富 亮一(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
共同演者 吉村 清(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 橋本 憲輝(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 渡邊 裕策(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 岡 正朗(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
抄録 【目的】癌幹細胞は転移や治療抵抗性に大きな役割を果たしていると考えられている.また,癌の可塑性によってEMTを介して癌細胞から癌幹細胞が発生しうることが報告されている.我々は,癌細胞株から癌幹細胞様Sphere細胞を誘導し,これを解析することで,癌転移に対する治療戦略の確立を目的とした.
【方法】低分化型肝細胞癌由来のヒト細胞株SK-HEP-1を特殊培地にて培養することで,Sphere細胞の誘導を行った.mRNA発現解析にはRT real-time PCRを用い,タンパク発現及び細胞周期解析にはフローサイトメトリーを用いた.ALDEFLUORアッセイによりALDH活性を測定した.抗癌剤感受性はMTSアッセイにより評価した.活性酸素種 (ROS) はDCFHからDCFへの酸化反応によって測定した.
【成績】誘導されたsphere細胞 (SK-sphere) は,元のSK-HEP-1株と比較して,幹細胞マーカー (NANOG and LIN28A) のmRNA発現が亢進 (>20 fold, P<0.01) し,ALDH1のmRNA発現及び活性の亢進が観察された.SK-HEP-1におけるIC70以上の5-FU, Docetaxel, Doxorubicin, SAHA存在下においても,SK-sphereは70%以上の生存を示した.細胞周期において,SK-sphereは親株と比べてG0/G1期の割合の増加とP21 mRNA発現の増加を示した.また,SK-sphereにおけるHIF1-alpha mRNAの発現亢進とROSの低下が観察された.さらに,SK-sphereのEpCAMの減少とVimentinの増加がタンパクレベルで確認された.
【結論】本研究から誘導された癌幹細胞様細胞は抗癌剤耐性を示し,その機構として,細胞周期の停止やROSの産生抑制,上皮間葉系移行が示唆された.
索引用語 癌幹細胞, 肝細胞癌