セッション情報 |
ポスターセッション(消化器外科学会)
肝臓-基礎研究 1
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タイトル |
外P-217:肝細胞癌におけるTransporter発現の意義
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演者 |
坂口 孝宣(浜松医大・2外科) |
共同演者 |
武田 真(浜松医大・2外科), 平出 貴乗(浜松医大・2外科), 柴崎 泰(浜松医大・2外科), 森田 剛文(浜松医大・2外科), 鈴木 淳司(浜松医大・2外科), 菊池 寛利(浜松医大・2外科), 鈴木 昌八(磐田市立総合病院・外科), 今野 弘之(浜松医大・2外科) |
抄録 |
【背景】以前我々は,術前投与された肝機能評価薬ICGが肝細胞癌(HCC)組織に沈着する性質を利用した近赤外線観察腫瘍同定法を報告したが,ICG沈着メカニズムや沈着状況と臨床病理学的因子の関連性について不明であった.今回は,HCC組織内ICG沈着に関連するtransporter蛋白の発現について検討を加えた.【方法】HCC肝切除43検体を近赤外線観察し,沈着ICG由来蛍光を腫瘍最大割面半分以上に認める群(H群),それ未満の群(L群)にわけて臨床病理学的因子と比較し,ICG取込・排泄関連transporter (OATP1B3, MRP2, MDR3, MRP3)蛋白発現を免疫染色にて調べた..また,新鮮凍結検体22例でそれらtransporterの蛋白発現量をWestern blot (WB)法にて解析した.【結果】 H群はL群に比し有意に隔壁形成が多かった.WB法では癌組織中の取込transporter OATP1B3発現量はH群で有意に高かった.癌組織中の排泄transporter MRP2(胆管や偽腺管へ排泄),MRP3(血管へ排泄)はHL群間で差はなかったが,MDR3(胆管や偽腺管へ排泄)発現はH群で有意に高かった.蛍光顕微鏡では偽腺管や排泄胆管にMDR3発現を認め,ICGは同部に共存していた.OATP1B3やMDR3の高発現群は各々低発現群に比べて有意に無再発生存率が良好であった.しかし,ICG H, L群の間には無再発生存率に差がなかった.免疫染色によるMDR3発現の検討では,陰性9例は陽性34例に比し有意に腫瘍径が大きく,血清AFP濃度が高かった.MDR3陰性は全て術後20月以内に再発,陽性群より有意に予後不良だった.MDR3多寡により,Phosphatydilcholineの組成が異なることも質量顕微鏡解析で確認された.【結論】HCC内ICG沈着は,MDR3経由で排泄されたICGが偽腺管や盲端構造細胆管に滞留することで起きた可能性が高い.また,MDR3の発現低下はHCCの予後不良因子である.MDR3発現低下がもたらすHCC細胞内リン脂質組成変化がどのようにHC悪性形質獲得と関連していくのか,が今後の課題である. |
索引用語 |
肝細胞癌, トランスポーター |