セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-基礎研究 2

タイトル 外P-219:

肝切除後における癒着形成のメカニズム

演者 大橋 浩一郎(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科))
共同演者 小坂 久(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科)), 平野 公通(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科)), 飯室 勇二(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科)), 藤元 治朗(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科))
抄録 【背景と目的】肝切除後の癒着は,腸閉塞や慢性の腹痛などの合併症を引き起こし,再肝切除時における癒着剥離は煩雑になり,また生体肝移植におけるドナー術後の癒着も問題となっている.我々は,マウスを用いた術後の腸管癒着形成にはIFN-γが関与しており,リコビナント肝細胞増殖因子(以下,rHGF)投与によりIFN-γ産生を抑制し癒着形成を減弱させたことを報告した(Nature Medicine誌/ 2008年).今回,マウスを用いて肝切除後における癒着のメカニズム及び制御法について研究した.【方法】マウス肝部分切除を行い癒着モデルを作製した.マウスは,野生型マウス(以下,WT)以外にNKT・IFN-γ・PAI-1の各ノックアウトマウス(以下,KO)を用いた.7日後に犠牲死させ,再開腹して癒着の程度をスコア化し組織学的にも検討した.癒着部における各分子の経時的な発現(mRNA)を測定した.rHGFを投与して癒着抑制効果を検討した.ヒト肝切除において,切除開始時及び切除開始3時間後の肝切離面のサンプルを採取し免疫染色及び各分子の発現を検討した.【結果】WTと比較すると,NKT KO及びIFN-γ KOマウスで癒着スコアは減弱していた.PAI-1 KOマウスでは全てにおいて全く癒着を認めなかった.WTにおける肝でのIFNγは3時間後に,PAI-1は6時間後に有意な発現がみられた.しかしIFN-γ KOマウスにおける6時間後のPAI-1の発現は上昇せず,PAI-1の発現はIFN-γ依存性であった.WTにrHGF投与すると,癒着スコアが低値を示し,IFNγ(3時間後)及びPAI-1(6時間後)の発現は抑制されていた.ヒト肝切除3時間後の肝切離面での免疫染色では,NKTの集簇を認め,肝細胞におけるPAI-1の発現上昇を認めた.また3時間後での肝におけるPAI-1の発現上昇を認めた.【結論】IFNγ及びPAI-1は肝切除後において早期に発現を認め癒着形成に重要であった.またこれらはHGF投与によって抑制できた.今後トランスレーショナルリサーチに向けた術後癒着形成予防のためのHGF投与の可能性について追及したい.
索引用語 癒着, 肝切除