セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-基礎研究 2

タイトル 外P-221:

Nrf2は肝虚血再灌流時の酸化障害に対して保護的に働く

演者 工藤 和大(秋田大・消化器外科)
共同演者 打波 宇(秋田大・消化器外科), 吉岡 政人(秋田大・消化器外科), 山本 雄造(秋田大・消化器外科)
抄録 【目的】NF-E2 related-factor2(Nrf2)は抗酸化遺伝子の発現を誘導することにより,生体を酸化ストレスから防御する転写因子である.そこで我々はNrf2が抗酸化作用にて肝虚血再灌流障害に対し保護的に働くか検討した.また,虚血前のNrf2活性増強が肝障害を軽減しうるか評価した.【方法】Wild type mice (C57BL/6 mice)(WT)とNrf2 knockout mice (KO)に1時間の70%肝虚血を行い,その後再灌流した.肝障害を血清AST,ALT及びH.E.染色で評価した.NQO1,GSTの肝組織mRNAをReal-time RT-PCRで,酸化障害を肝組織GSH/GSSG比とMalondialdehyde (MDA) 濃度により評価した.さらに肝虚血再灌流前にNrf2を活性化する目的で両群に15-deoxy-Δ12,14prostaglandin J2(PGJ2)を尾静注し,その3時間後に上記と同様の実験を行った.【成績】Nrf2依存性の抗酸化遺伝子(NQO1,GST)発現は,WTに比べKOで有意に低値であった.肝虚血再灌流6時間後のAST,ALTはWTに比してKOで有意に高値であり,組織学的にも肝細胞壊死がWTよりKOで広範囲に認められた(AST:WT 857±84IU/L,KO 1758±376IU/L; ALT:WT 1835±158IU/L,KO 2893±450IU/L,p<0.05).さらに再灌流後,WTに比しKOでGSH/GSSG 比は有意に低下し(WT 0.59±0.07,KO 0.32±0.02,p<0.05),過酸化脂質のMDAも有意に上昇していた(WT 263±10,KO 383±18,p<0.05).PGJ2前投与群では,WTでのみ抗酸化遺伝子発現が増強していた.また,WTにおいてPGJ2前投与は肝虚血再灌流後の肝細胞壊死,酸化障害を抑制したが,KOではこれらの抑制効果を認めなかった(AST:WT 511±58IU/L,KO 1488±418IU/L; ALT:WT 902±100IU/L,KO 2593±405IU/L; GSH/GSSG比:WT 1.09±0.06,KO 0.39±0.03; MDA:WT 199±22,KO 394±18).【結論】肝虚血再灌流障害抑制にNrf2は重要な役割を担っていた.さらにNrf2活性増強が再灌流後の障害を軽減していたことから,Nrf2前活性化は肝臓外科における治療戦略になりえると思われた.
索引用語 Nrf2, 肝虚血再灌流障害