共同演者 |
板野 理(慶應義塾大・一般消化器外科), 岸田 憲弘(慶應義塾大・一般消化器外科), 真杉 洋平(慶應義塾大・病理学), 田邉 稔(慶應義塾大・一般消化器外科), 篠田 昌宏(慶應義塾大・一般消化器外科), 北郷 実(慶應義塾大・一般消化器外科), 阿部 雄太(慶應義塾大・一般消化器外科), 八木 洋(慶應義塾大・一般消化器外科), 辻川 華子(慶應義塾大・病理学), 坂元 亨宇(慶應義塾大・病理学), 北川 雄光(慶應義塾大・一般消化器外科) |
抄録 |
【目的】Nonalcoholic Steatohepatitis (NASH)を基盤に発生したと思われる肝癌の臨床病理学的特徴を明らかにする.【方法】2003年から2010年の間に肝切除術を施行した非B型非C型(NBNC)症例のうちNASH肝癌に関して臨床病理学的検討を行う.【成績】肝癌の切除症例は161例.肝背景疾患の内訳はNBNC46例(28.5%),B型43例(26.7%),C型72例(44.8%).NBNCのうちアルコール摂取なしまたは摂取量軽度の症例は25例.組織学的にNASHとして矛盾しないもしくはNASHの可能性のある脂肪化や線維化のみられる背景肝を呈するもの15例(男性13例,女性2例)で平均年齢66.3±9.0歳,背景肝が肝硬変に陥っているものは6例(40.0%),前肝硬変までのものは9例(60.0%).ほぼ全例で肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常症などの何らかの生活習慣病を合併,BMIの平均値26.4,高血圧6例(40.0%),糖尿病8例(53.3%),脂質異常症5例(33.3%).血液検査所見は,AST32IU/L(16-63),ALT37IU/L(10-125),ALP194IU/L(153-1694),γGTP55IU/L(15-490),AFP9(1-3441),PIVKA-II606(69-36400).術前の肝機能はChild Aが13例,Child Cが2例で後者には生体肝部分移植術が施行.腫瘍は単発例が11例(73.3%),多発例が4例(26.7%),組織型は高分化型3例(20.0%),中分化型11例(73.3%),低分化型1例(6.7%), 脈管侵襲陽性例は8例(53.3%).病理学的進行度は,Stage Iが2例(13.4%),IIが5例(33.3%),IIIが5(33.3%),IVAが3例(20.0%).これらのうち15例中8例(53.3%)で再発を認め,8例中6例(75.0%)が治療に反応なく死亡.全症例の無再発生存期間の中央値は751日(89-2887).【考察】NASHを基盤とした肝癌では生活習慣病の合併が多くみられ,肝硬変に至らない線維化が軽度の症例からも発癌を認めた.当院の症例では約半数で再発を認めており,再発例は治療への反応性が悪い可能性が示唆され,原発巣の治療と並行して基盤となるNASHに対する治療と長期間にわたる慎重なフォローアップが重要. |