セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

肝臓-診断

タイトル 外P-229:

原発性肝細胞癌と鑑別困難であった肝reactive lymphoid hyperplasia(RLH)の1切除例

演者 池田 匡宏(光生会病院・外科)
共同演者 金子 哲也(光生会病院・外科)
抄録 [症例]55歳,女性[主訴]肝腫瘤[現病歴]近医にて胆石経過観察中に肝腫瘤を指摘され精査目的に入院となった.[血液生化学検査所見]γ-GTP 177IU/L,HbA1c 7.7%と上昇を認めた.肝炎ウイルスマーカーは陰性,腫瘍マーカーは基準値内であった.ICG K値0.214であった.[画像検査所見]USで肝S7/8深部に19x19mmの境界明瞭な低エコー腫瘤を認めた.造影CTでS7/8に18mmの低吸収域を認め動脈相で辺縁優位に造影効果を認め,門脈相・平衡相ではwashoutされた.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示した.腹部血管造影でA7をfeederとする淡い腫瘍濃染を認めCTAPでは腫瘍部はperfusion defectを認めた.以上より動脈血優位の比較的早い腫瘍内血流を認め,確診には至らなかったがHCCを強く疑い右肝切除術を施行した.[切除標本肉眼所見]腫瘍は22x25x20mm,被膜の形成なく白色充実性で境界明瞭であった.[病理組織・免疫染色検査所見]二次濾胞様の結節性集族性増殖を伴う大小リンパ球は,免染でL-26,CD79αは二次濾胞様結節構成細胞を含むB-lymphocyteに陽性,CD3,CD4,CD8は結節間領域を主体としたT-lymphocyteに陽性.bcl-2は胚中心相当部を除くB-lymphocyteに陽性,CD10は胚中心相当部細胞に陽性を示した.以上より肝RLHと診断した.[考察]RLHは組織学的には反応性の胚中心を伴ったリンパ濾胞を認め,リンパ球に異型がなくpolyclonalな反応性の増殖を認めるものと定義される.肝RLHは23例の報告例がある.特徴として中年以降の女性に多く,慢性肝炎,膠原病,悪性腫瘍との合併が指摘されているが関連性は明らかではない.併存疾患では糖尿病4例,悪性疾患4例,自己免疫疾患5例,慢性肝炎5例などが報告されている.肝RLHは臨床的特徴を呈さず,画像診断のみでは悪性腫瘍との鑑別は困難であり手術に至ることが多い.確診に至る唯一の方法は肝生検であるが3例の生検例では悪性リンパ腫との鑑別診断が困難,また悪性化の報告例もあり摘出術が行われており,悪性腫瘍を疑う場合には播種が危惧される.肝腫瘍の鑑別診断として示唆に富む症例であり報告する.
索引用語 liver, reactive lymphoid hyperplasia