セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胆道-症例 2

タイトル 外P-263:

膵癌にて膵中央切除術後5年を経過して認めた下部胆管癌の1例

演者 石井 雅之(荏原病院・外科)
共同演者 氷室 直哉(荏原病院・外科), 野口 岳春(荏原病院・外科), 加藤 孝章(荏原病院・外科), 竹下 信啓(荏原病院・外科), 吉利 賢治(荏原病院・外科), 太田 岳人(荏原病院・外科), 江口 礼紀(荏原病院・外科)
抄録 膵癌は進行癌で発見されることが多く,切除率は4割弱程度である.また,切除後も局所再発や転移をきたす例が多く,予後不良である.転移・再発症例は一般的に手術適応はなく,抗癌剤治療や放射線治療,場合によってはBest Supportive Care等の適応となることが多い.このため,膵癌術後の異時性重複癌の発生や切除の報告例は極めて少ない.今回,通常型膵管癌に対し,膵中央切除術を施行後5年を経過して発生した下部胆管癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は81歳男性.2006年8月に糖尿病を指摘され,その後糖尿病の増悪及び体重減少を認め,精査にて膵頭部と体部の境界領域に腫瘤,及び尾側の膵管拡張を認めた.膵液細胞診では悪性細胞を検出できなかったが,悪性腫瘍を疑い,2007年1月に手術を施行し,術中迅速病理検査にて膵癌と診断された.本来であれば膵頭十二指腸切除もしくは膵体尾部切除を施行すべきであるが,いずれも残存膵が小さく膵機能の低下が予想された.患者本人のインスリン導入に対する抵抗感が強く,残存膵機能保持を考慮し,また術前の画像診断上明らかな主要動脈浸潤や転移は見られず,膵中央切除にて郭清可能と判断し,最終的に膵中央切除術を施行した.病理組織診断はpT2,pN0,M0,fStage2で,術後補助化学療法としてTS-1(120mg/日)投与を約15コース行い,以後再発なく経過していた.
2012年7月に施行したCTにて下部胆管閉塞,総胆管~肝内胆管の拡張を認め,その後急性胆管炎を発症したため,胆汁ドレナージ目的にENBDを留置.胆汁細胞診にてadenocarcinomaと診断されたが,膵癌再発もしくは下部胆管癌の鑑別は困難であった.画像所見にて明らかな主要動脈浸潤や転移は認めず,根治切除可能と判断し,同9月に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断は下部胆管癌(異時性重複癌),pT4(pPanc2),pN0,M0,fStage4aで,術後補助化学療法としてGEMを導入し,現在経過観察中である.
索引用語 胆管癌, 異時性重複癌