セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-化学療法 2

タイトル 外P-327:

大腸癌KRAS変異症例に対する抗EGFR抗体薬治療の効果予測因子の検討

演者 吉敷 智和(杏林大・外科)
共同演者 正木 忠彦(杏林大・外科), 小嶋 幸一郎(杏林大・外科), 高安 甲平(杏林大・外科), 小林 敬明(杏林大・外科), 松岡 弘芳(杏林大・外科), 阿部 展次(杏林大・外科), 森 俊幸(杏林大・外科), 杉山 政則(杏林大・外科)
抄録 【背景,目的】切除不能再発大腸癌(metastatic colorectal cancer: mCRC)についての海外の臨床試験において,抗EGFR抗体薬の負の治療効果予測因子としてKRAS遺伝子変異が同定された.一方,その臨床試験の解析の中からKRAS変異症例の中でG13D変異症例に関しては,抗EGFR抗体薬が有効であったとの報告も認められる.そこで,KRAS変異症例に対する抗EGFR抗体薬治療の効果に関して検討した.【対象,症例】症例は,抗EGFR抗体薬(セツキシマブ,パニツムマブ)が投与された切除不能再発大腸癌患者65例である.男性49例,女性16例で平均年齢は68歳であった.【方法】ダイレクトシークエンス法と免疫染色を用いて,変異の有無と発現異常を調べた.検討遺伝子はKRAS,BRAF,PIK3CA,PTEN,METとした.【結果】KRAS遺伝子変異は32%(21/65)であった.KRAS遺伝子変異の有無で,Response rate(RR;P=0.0008),Disease control rate(DCR;P<0.0001),Progressive free survival(PFS;P<0.0001) に有意差を認めた.KRAS変異症例(G13D変異:8例,それ以外の変異症例:13例)では,G13D変異とそれ以外の変異症例の比較で,G13D変異に抗EGFR抗体薬の効果が認められる傾向があった(DCR:P=0.0421, PFS:P=0.0739).また変異症例中でもPFSにPTENとMETの分子異常の有無で有意差を認めた(PTEN; P=0.0442, MET; P=0.0157). KRAS野生型とG13D変異症例では,DCRは有意差を認めないが,PFSで有意差を認めた(P=0.0033).【結論】KRAS遺伝子変異症例においてPTEN,METは抗EGFR抗体薬の効果予測因子として有用であった.またG13D変異症例はKRAS野生型と比較すると,奏効率,生存率は低かったが,他の分子異常を検討することで,G13D変異症例の中で抗EGFR抗体薬の効果が期待できる症例を選別できる可能性が示唆された.
索引用語 KRAS変異型, 抗EGFR抗体治療