セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-診断 2

タイトル 外P-359:

リンパ節郭清を要する大腸SM癌の選別-リスク因子の陽性判定に関する施設間格差の影響を含めて

演者 上野 秀樹(防衛医大・外科)
共同演者 神藤 英二(防衛医大・外科), 内藤 善久(防衛医大・外科), 島崎 英幸(防衛医大病院・病理), 梶原 由規(防衛医大・外科), 岡本 耕一(防衛医大・外科), 識名 敦(防衛医大・外科), 久保 徹(防衛医大・外科), 深澤 智美(防衛医大・外科), 山本 順司(防衛医大・外科), 長谷 和生(防衛医大・外科), 杉原 健一(東京医歯大大学院・腫瘍外科学)
抄録 大腸SM癌のリンパ節(LN)転移リスクを検討する際に,陽性判定に関する施設間格差に焦点があてられることは稀である.この観点から第75回大腸癌研究会にて施行した多施設アンケート調査結果を検討した.アンケート調査では,既存のリスク因子に加え,低分化胞巣(5個以上の癌細胞から構成され,腺管構造を形成しない癌胞巣)が施設毎に評価された.30施設より回答を得,集計された3556症例(男性2174例,女性1382例;23~97歳(平均65歳))を解析した.【結果】対象症例における LN転移頻度は11%であり,SM浸潤度(>1000μm),組織型(低分化・粘液癌),脈管侵襲(陽性),簇出(Grade 2/3),低分化胞巣(陽性)は,いずれも有意なLN転移リスク因子であった(全てP<0.0001).AIC値を基準としたLN転移リスクの分別能の比較において,低分化胞巣は脈管侵襲に次いで良好であった.一方リスク陰性例におけるLN陽性頻度はSM浸潤度で最も低かったが(3.4%),SM浸潤度のAIC値は最も不良であった.低分化・粘液癌,脈管侵襲,簇出Grade 2/3,低分化胞巣を質的リスク因子とした場合のLN転移率は,リスク陰性症例で3.7%,陽性症例で15.9%であった(P<0.0001).18施設(計1417症例)において偽陰性例(全てのリスクが陰性であるにもかかわらずLN転移が存在する症例)は皆無であるのに対して,12施設(計2139症例)で偽陰性症例が存在した.後者では前者に比べ,低分化・粘液癌(2.6% vs 1.4%, P=0.007),脈管侵襲陽性(45.4% vs 34.4%, P<0.0001),低分化胞巣陽性(50.9% vs 31.8%, P<0.0001)の陽性診断率が有意に低率であった.【まとめ】偽陰性症例の発生に関して,リスク因子の陽性判定基準の閾値が関与する可能性が示唆された.低分化胞巣をはじめとするリスク因子の的確な病理組織学的判定が,追加切除なくフォローし得る症例の選別に肝要である.
索引用語 大腸SM癌, リンパ節転移