セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-診断 2

タイトル 外P-361:

進行大腸癌におけるLaminin-β3発現の臨床的意義に関する検討

演者 深澤 智美(防衛医大・外科)
共同演者 神藤 英二(防衛医大・外科), 上野 秀樹(防衛医大・外科), 内藤 善久(防衛医大・外科), 梶原 由規(防衛医大・外科), 岡本 耕一(防衛医大・外科), 識名 敦(防衛医大・外科), 久保 徹(防衛医大・外科), 山本 順司(防衛医大・外科), 長谷 和生(防衛医大・外科)
抄録 【背景】基底膜の主要構成成分であるLaminin(LN)-5はα3鎖,β3鎖,γ2鎖の3鎖から構成されるヘテロトリマー分子であり,細胞接着や遊走活性促進に関与するとともに,多種の癌において癌先進部の分化度が低下する領域の細胞質に局在することが報告されている.しかし,LN-γ2鎖のタンパク発現を評価する検討は散見されるが,同じくLN-5固有のサブユニットであるLN-β3鎖の発現に関する報告は少ない.【方法】進行大腸癌初回手術51例(2008~09年)を対象とし,その代表的切片におけるSM先進部(SM),垂直先進部(VF),中央部(Ce),周堤(Ro)より直径2mmの円柱状組織を採取し組織マイクロアレイ(TMA)を作成した.TMA切片に対し,LN-β3の免疫組織染色を施行,腫瘍内局在および臨床病理学的因子との相関を検討した.また,同検体でLN-γ2の免疫組織染色も施行し,両者の相関を評価した.TMA組織中に含まれる癌細胞の細胞質に染色性を認める癌細胞の割合から,LN-β3は20%以上を陽性,LN-γ2は40%以上を陽性と判定した.【結果】1)LN-β3の部位別陽性率:SM,VF,Ce,Roでそれぞれ29,31,20,4%であり,Roは他部位より低率であった.2)LN-γ2との相関:Roを除く部位でLN-β3とLN-γ2は有意な正の相関を認めた(SM:P<0.0001,VF:P=0.0002,Ce:P=0.0017).3)臨床病理学的因子との相関:LN-β3は占居部位,深達度,組織型と相関を認めなかった.SM,VF,Ceにおいて,LN-β3陰性症例はbudding軽度が有意に高率であった.また,VFではリンパ節転移の有無との相関を認めた.4)Overall Survival(OS)との相関:VFにおいてLN-β3陽性症例は陰性症例に比べOSが不良である傾向を認めた(3年OS:57.3% vs 80.0%,P=0.0670).VFにおけるLN-γ2陽性症例の3年OS(46.2%)は,陰性症例(84.0%)に比べ有意に低率であった(P=0.0080).【結論】LN-β3はbudding,リンパ節転移,LN-γ2と相関した.VFにおけるLN-5の各鎖発現は予後と関連している可能性が示唆された.
索引用語 大腸癌, Laminin-5