セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

大腸-周術期管理

タイトル 外P-365:

腹腔鏡手術はなぜ回復が早い?

演者 山田 岳史(日本医大・外科)
共同演者 松本 智司(日本医大千葉北総病院・外科), 佐々木 順平(日本医大千葉北総病院・外科), 菅 隼人(日本医大・外科), 小泉 岐博(日本医大・外科), 進士 誠一(日本医大・外科), 松田 明久(日本医大千葉北総病院・外科), 谷 杏彌(日本医大・外科), 原 啓介(日本医大・外科), 内田 英二(日本医大・外科)
抄録 【背景】患者の回復を早めることで合併症発症率を低下させ,また入院期間を短縮できる.我々はこれまでに術前機械的前処置や術中過量輸液が術後の腸管運動麻痺を遷延させることを報告してきた.待機手術を行なった結腸癌症例を対象として執刀2時間前に放射線不透過マーカーを内服させ,術後1,3,5日目に腹部単純レントゲン検査にて小腸内に残存するマーカー数をカウントすると,腹腔鏡手術症例で有意に少ない.すなわち腹腔鏡手術では開腹手術よりもマーカーが早く排泄される.しかし,なぜ腹腔鏡手術では術後回復が早いのか,その理由は明らかでない.【仮説1:腹腔鏡手術では創が小さく,疼痛が軽微なため術後の運動量が多い】結腸癌手術患者(30例)に万歩計を装着してもらい,術後の歩行数を比較した.Day1: 243 VS 219, Day2: 433 VS 360, Day3: 801 VS 562, Day4: 1148 VS 730, Day5: 1227 VS 818,といずれの日においても腹腔鏡手術を受けた患者で歩行数を多い傾向を認めたが,有意な差を認めなかった.【仮説2:腹腔鏡手術では出血量が少なく,術中不感蒸泄も少ないため輸液量が少ない.開腹手術では輸液が過剰になりやすく,腸管の浮腫を招きやすい】結腸癌連続200例にて,総輸液量3052 VS 2686 ml (P=0.006),補正輸液量15.1 VS 12.3 ml/kg/h (P<0.001),出血量369 VS 90 ml (P<0.001)であり,腹腔鏡手術では輸液量も出血量も少ない.【仮説3:開腹操作中に腸管の温度が低下するために腸管運動が抑制される】赤外線サーモグラフィーを用い小腸表面温度を測定し,3点の平均値を得た.開腹直後は34.9度であったのに対し,腹壁上に置いておくと5分ごとに30.8度,27.8度,25.3度と低下した.切除直後の切除腸管の表面温度は25.1度と15分間放置された場合とほぼ同等であった.
索引用語 ERAS, 早期回復