共同演者 |
田中 浩明(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 櫻井 克宣(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 豊川 貴弘(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 木村 健二郎(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 永原 央(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 天野 良亮(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 野田 英児(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 久保 尚士(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 大谷 博(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 山本 篤(大阪市立総合医療センター・消化器外科), 山下 好人(大阪市立総合医療センター・消化器外科), 前田 清(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 澤田 鉄二(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 大平 雅一(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 平川 弘聖(大阪市立大大学院・腫瘍外科学) |
抄録 |
胃癌に対する腹腔鏡下手術の普及により,幽門側胃切除(DG)後の消化管再建に器械吻合が汎用されるようになった.吻合法別の臨床的有用性に関するいくつかの臨床試験が施行されたが,現状では明らかなエビデンスは存在しない.今回,B-I法とRoux-en-Y(R-Y)法の臨床的有効性につき検討を行った.「対象・方法」2005年から2010年に当科で施行した幽門側胃切除術(DG)462例のうち,B-II法による再建を行った22例を除いた440例を対象として,B-I群とRoux-en-Y(R-Y)群の術後短長期的有効性を後方視的に解析した.「結果」440例の内訳は,開腹幽門側胃切除術(ODG)288例,腹腔鏡下幽門側胃切除術(LDG)152例で,B-I群:249例(ODG/LDG:205/44例),R-Y群:191例(ODG/LDG:83/108例)であり,ODGではB-I群が有意に多く,LDGではR-Y群が多い傾向にあった.各群における年齢,性別,BMI,pStageなどの背景因子に差を認めなかった.術後合併症のうち吻合に関する合併症(縫合不全/吻合部狭窄/吻合部出血)について検討すると,その発生率はB-I群:2.0/2.4/2.8%, R-Y群:2.6/1.6/1.6%であり,有意差はないもののB-I群に狭窄や出血が多く認められた.体重減少率(B-I群:10.1%, R-Y群:9.7%),逆流性食道炎(B-I群:3.2%, R-Y群:2.6%)の発生率には差を認めなかったが,胃内容排出遅延(B-I群:12.0%, R-Y群:5.2)および残胃炎(B-I群:8.0%, R-Y群:3.7%)は有意にR-Y群で低率であった.(p<0.01) 「結語」R-Y再建法は,体重減少率の面からはB-I法に比較して有用とは言えないが,胃排出遅延や残胃炎の発症は低率であり,デメリットであるとされる術後胆道疾患の保存的治療も可能であった.メリット,デメリットを十分に熟知しながら,症例に応じて今後も両吻合法を適宜使い分けしていくことが重要であると考える. |