共同演者 |
田中 千恵(名古屋大大学院・消化器外科学), 神田 光郎(名古屋大大学院・消化器外科学), 山田 豪(名古屋大大学院・消化器外科学), 中山 吾郎(名古屋大大学院・消化器外科学), 藤井 努(名古屋大大学院・消化器外科学), 杉本 博行(名古屋大大学院・消化器外科学), 小池 聖彦(名古屋大大学院・消化器外科学), 野本 周嗣(名古屋大大学院・消化器外科学), 藤原 道隆(名古屋大大学院・消化器外科学), 小寺 泰弘(名古屋大大学院・消化器外科学) |
抄録 |
【背景】幽門側胃切除後の再建法についてB-1法(B1)とRoux-en-Y法(RY)の選択基準は施設,術者によりさまざまである.2つの再建法の比較を種々の因子を用いて客観的に評価した.【対象と方法】対象は開腹幽門側胃切除術(ODG)を施行した244例である.当科では2005年よりODGの再建にRYを採用しており,それ以前のB1:140例(1996年~2004年)とRY:104例(2005年~2011年)の2群で手術時間,出血量,合併症,術後栄養機能評価として術前と術後6か月のTP,Alb,T-Chol,Hb値を比較した.加えて術後初回の残胃内視鏡検査をRGB classificationで評価した.また胃切除後のQOL評価を2005年から2010年まで施行しており,そのうちB1:59例(ODG/LADG;4/55)とRY:28例(ODG/LADG;19/9)について比較した.QOL調査票はEORTC QLQ-C30,STO22を用い,術前,術後1か月,3か月,半年,1年,1年半,2年の時点で郵送した.【結果】手術時間はRYが長く,出血量もRYで多かった.合併症はB1に35例(25%)認め,吻合部関連の合併症はB1で縫合不全6例,吻合部狭窄4例,吻合部出血1例,吻合部潰瘍1例であった.RYは32例(31%)に認めた.そのうち十二指腸断端縫合不全を1例に認めたがその他の吻合部関連の合併症はなく,stasisを4例に認めた.血液生化学検査(B1:30例,RY:90例)の術前/術後の比較では,Alb値においてRYで有意な上昇傾向が見られた(中央値でB1:4.1/4.0(p=0.8157),RY:3.8/3.9,(p=0.0106)).残胃内視鏡検査(B1:50例,RY:40例)ではRYがgastritis, bile refluxの頻度が低かった.QOLの比較では悪心と嘔吐,便秘,胃痛でRYの有症状率が低く,下痢,嚥下困難ではB1の有症状率が低かった.【考察】RYは吻合部関連の合併症が少なく,残胃炎,胆汁逆流の予防でも有利であった.また術後の栄養状態の回復に優れている可能性や,術後QOLの観点からもB1に遜色ない結果が示唆された.RYは安全で有用な再建法であると言えるが,胆道系の検査や処置は困難であり,より長期的な視点からも評価が必要である. |