セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-症例 1

タイトル 外P-406:

高度進行胃癌に対するS1/CDDP療法にみられた肝類洞閉塞症候群における脾腫

演者 戸井 博史(恵み野病院・外科)
共同演者 柴崎 晋(恵み野病院・外科), 津田 一郎(恵み野病院・外科), 中村 貴久(恵み野病院・外科), 長谷 泰司(恵み野病院・外科)
抄録 大腸癌に対するオキサリプラチンを含む化学療法において,肝類洞閉塞症候群がみられることが知られている.オキサリプラチンを含む化学療法においては,脾腫がみられることも報告されており,脾腫は肝障害の程度を推測するバイオマーカーであるとされている.また,大腸癌術後補助化学療法としてのFOLFOX療法では,治療終了後徐々に脾腫が改善することが報告されている.我々は,高度進行胃癌に対するS1/CDDP療法において,肝類洞閉塞症候群がみられた1例を経験し,英文・邦文ともに同様の報告はなかったので報告した(Clin J Gastroenterol 5:341-346, 2012).同症例では,術後補助化学療法としてS1単剤療法を施行し,経過観察中である.同症例における,脾腫の推移について報告する.
【症例】56歳,男性.上部消化管内視鏡検査で胃幽門前庭部に2型病変を認め,生検で中分化~低分化管状腺癌と診断された.胸腹部CTで傍大動脈リンパ節腫大を認め,治癒切除不能の高度進行胃癌と診断し,S1/CDDP療法を施行した.S1/CDDP療法施行中,徐々に増悪する脾腫を認めていたが,血小板減少を含め,副作用はGrede 1までとどまるものであった.6コース終了後,上部内視鏡検査では,潰瘍瘢痕を残すのみとなり,生検でも悪性所見を認めなかった.胸腹部CTでも傍大動脈リンパ節腫大が消失した.傍大動脈リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除を施行し,術中,肝に不均一に分布するうっ血,いわゆるblue liverを認め,肝生検を併施した.病理組織学的には,領域リンパ節の3個に病変の遺残を認めたが,原発巣・傍大動脈リンパ節には遺残を認めなかった.肝生検では,中心静脈領域に優位な類洞拡張とうっ血を認め,肝類洞閉塞症候群と診断された.特に術後合併症なく経過し,術後補助化学療法としてS1単剤療法を9ヵ月施行した.S1単剤療法施行中,脾腫には増悪も改善もみられなかった.
索引用語 術前化学療法, 薬剤性肝障害