セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-症例 1

タイトル 外P-410:

高度のリンパ節転移を伴った微小な胃粘膜内癌の1例

演者 西島 弘二(金沢赤十字病院・外科)
共同演者 岡崎 充善(金沢赤十字病院・外科), 二上 文夫(金沢赤十字病院・外科), 中村 隆(金沢赤十字病院・外科), 西村 元一(金沢赤十字病院・外科)
抄録 今回,われわれは,高度なリンパ節転移を伴った微小な胃粘膜内癌の1例を経験したので報告する.症例は81歳の男性で,近医にて健診目的に施行した上部消化管内視鏡検査で胃体中部大彎に径5mmの0-IIc病変を認め,生検で低分化腺癌の診断が得られ,当院紹介となった.腹部CT検査では,明らかな転移は認めず,胃癌T1aN0M0 cStageIAの術前診断で,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術D1+を施行した.病理組織学的診断は,印環細胞癌で,M, Gre, Type 0-IIc, 5×4mm, sig, pT1a, UL(-), ly0, v0, N3b(17/47){No.1(0/3), No.3a(0/4), No.3b(0/4), No.4sb(1/1), No.4d(14/19), No.5(0/1), No.6(2/2), No.7(0/7), No.8a(0/2), No.9(0/4)}と高度なリンパ節転移を認めた.径5mmの粘膜内癌で脈管侵襲陰性であったにもかかわらず,17個もの領域リンパ節転移を認めたことは予想外であり,病変部のブロックを詳細に再評価したが,粘膜下組織への癌の浸潤は認めなかった.胃以外に原発巣が存在する可能性を否定し得ないと考え,また,リンパ節転移残存の有無の確認のため,術後にFDG-PETを行ったが異常所見を認めなかった.以上より,最終診断はT1aN3bM0 StageIIBであった.術後補助化学療法は希望されず,経過観察のみ行っているが,術後1年が経過した現時点において無再発生存中である.胃癌に対するESDについて,2cm以下のUL(-)の未分化型cT1aについてはリンパ節転移の危険性が極めて低く,適応拡大病変とされているが,本症例のように腫瘍径5mmのUL(-)の粘膜内癌でも,高度のリンパ節転移を認めたことから,また,現時点では長期予後に関するエビデンスが乏しいことも含め,臨床試験の結果が出るまでは,適応拡大病変に対するESDは臨床研究として行うべきである.ESD適応拡大病変の標準治療は,外科的胃切除であり,研究的治療に従った場合,症例によっては根治性を失う可能性があることを念頭に置くべきで,治療方針の決定には十分に慎重を期す必要があると考えられた.
索引用語 胃粘膜内癌, リンパ節転移