セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-症例 2

タイトル 外P-411:

噴門側胃切除,ダブルトラクト再建術後に発生した残胃癌の1切除例

演者 芝原 一繁(富山赤十字病院・外科)
共同演者 辻 敏克(富山赤十字病院・外科), 棚田 安子(富山赤十字病院・外科), 羽田 匡宏(富山赤十字病院・外科), 竹原 朗(富山赤十字病院・外科), 野崎 善(富山赤十字病院・外科), 佐々木 正寿(富山赤十字病院・外科), 小西 孝司(富山赤十字病院・外科)
抄録 上部胃癌に対する縮小手術としての噴門側胃切除術に関し,その適応,再建方法,サーベイランスが議論されるが,今回,残胃の癌に対する手術において初回手術のダブルトラクト再建が有用と考えられたので報告する.症例は75歳女性.12前に胃癌(U, post, por2, T3, N1)に対して噴門側胃切除,後結腸性ダブルトラクト再建術を施行されている.術後は定期的に外来通院していたが,採血上,貧血の進行を認め,内視鏡検査にて残胃癌を指摘された.身体所見上,貧血を認めた他は,腫瘤や表在リンパ節は触知しなかった.血液生化学検査ではHb 8.7g/dl, Ht 25.25 %であった.腫瘍マーカーは正常だった.内視鏡検査では残胃体下部前壁にIIa進行病変を認め,生検でpor2を認めた.CT検査にて残胃体下部前壁で粘膜~粘膜下層にかけての壁肥厚および不整な造影効果を認めた.明らかなリンパ節腫大や肝転移,腹膜転移は認めなかった.M, ant, M-12-O, Type2, por2, T2,N0と診断し残胃全摘術を施行した.腹腔内の癒着を剥離すると,腫瘍は残胃前壁に触知した.明らかな漿膜浸潤は認めず,T2程度であった.空腸吻合部には癌の進展は認めなかった.後結腸性に挙上された空腸の血流に留意しながら端側吻合部を5cm含め,大網,網嚢を切除し,残胃全摘を施行した.16b1のサンプリングを行った後に挙上空腸断端を手縫いで端々吻合した.吻合の緊張はなく,血流も良好であった.手術時間は2時間40分で,出血量は270gであった.術後経過は良好で術後11日目に退院した.噴門側胃切除後の残胃癌手術においては,口側断端の確保の必要性から手術が困難となる場合が多い.残胃食道吻合とは違い,ダブルトラクト再建後では口側断端となる空腸との側端吻合部の切除は容易で,またその再建も端々吻合が容易に行える.残胃癌に対する手術治療を考慮する場合,切除,再建が容易なダブルトラクト再建は有用な再建方法であると考えられた.
索引用語 残胃癌, ダブルトラクト再建