セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-症例 3

タイトル 外P-420:

多発壁内転移と小腸転移を伴った胃癌の術後にTrousseau症候群の脳梗塞を発症した一例

演者 神山 博彦(越谷市立病院・外科)
共同演者 市川 亮介(越谷市立病院・外科), 有馬 秀英(越谷市立病院・外科), 杉山 祐之(越谷市立病院・外科), 武井 雅彦(越谷市立病院・外科), 行方 浩二(越谷市立病院・外科), 津村 秀憲(越谷市立病院・外科), 松本 文夫(越谷市立病院・外科)
抄録 症例は70歳男性,嘔気に対する精査で胃に多発するIIc病変と幽門狭窄を認め,生検で低分化腺癌と診断された.CEA1048.8ng/mlと高値であったが画像上明らかな遠隔転移は認めず,手術を行った.腹膜播種・腹水・肝転移を認めず,胃全摘・Roux-en-Y再建・胆嚢摘出術を施行した.術中に回腸末端部に約10cmにわたる腸管の異常な硬化を触知したため,回盲部切除術を追加した.胃の病変は非充実性低分化腺癌であり,著名なリンパ管侵襲を認めた.幽門前庭部の5型腫瘍に加えて多数の壁内転移を認め,噴門部に平滑筋腫も認めた.回腸および盲腸には腺癌を認めた.術後経過は問題なく,退院後外来で経過観察中であったが,術後2ヶ月に突然の意識障害で救急搬送され,頭部MRIで多発する急性脳梗塞が認められた.術直後にCEAは減少したものの,その後は再上昇していたため,癌は進行していたものと考えられ,臨床上Trousseau症候群の脳梗塞と診断した.2週間後に更なる意識レベルの低下ののち死亡した.胃癌の壁内転移は極めて稀である.リンパ管侵襲が高度である場合,主病変近くのリンパ管が癌で閉塞され,リンパ流の変化をきたして胃の他の部位に壁内転移すると考えられる.胃癌の小腸転移は極めて少なく,予後は不良である.小腸への転移経路としてはリンパ行性・血行性・播種性が考えられる.自験例は胃・小腸ともにリンパ管侵襲が顕著であったことからリンパ行性転移と判断した.胃周囲のリンパ管が広範に癌で閉塞されたためリンパ流の変化をきたし,小腸に転移した可能性も考えられた.Trousseau症候群は担癌患者の凝固機能異常に起因する血栓塞栓症の包括的概念である.担癌状態では血栓塞栓症が多いことが知られているが,予防的抗血栓療法に関するコンセンサスはないのが現状である.自験例は,胃癌の多発壁内転移および小腸転移で予後不良であることが想定されていたが,脳梗塞を発症して比較的急速な経過で致命的となった.
索引用語 胃癌壁内転移, 小腸転移