セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-症例 4

タイトル 外P-422:

術後60年経過して発生した残胃がんの1例

演者 宮下 光世(国立長崎川棚医療センター)
共同演者
抄録 (はじめに)術後60年を経過して発生した残胃がんの症例を経験したので報告する.(症例)症例は76歳女性.16歳の時に出血性胃潰瘍にて幽門側胃切除術,ビルロート2法再建を受けている.高血圧,胃切除後症候群などで近医加療中で2年に1回胃内視鏡検査を受けていた.2012年の胃内視鏡にて残胃吻合部の隆起性病変を指摘され精査目的で紹介となった.内視鏡所見では吻合部大彎を中心に発赤と隆起を認めた.同部の生検でGroup5,adenocarcinoma と診断された.胃透視では吻合部に結節状の隆起を認めた.壁の硬化は認めなかった.胸部および腹部CT,骨シンチで明らかな転移は認めなかった.切除可能と診断し手術を施行した.術式は残胃全摘,RouxY再建である.切除胃の肉眼所見では,吻合部胃側に全周にやわらかく低い隆起を認め,大彎では隆起は高かった.転移を思わせるリンパ節はなかった.病理診断では高分化型管状腺癌,粘膜内がんで大きさ20×95mm, T1aN0H0P0M0 Stage1A であった.術後経過は順調で術後15日目に退院した.(考察) 残胃がんは初回良性病変ではビルロート2法に多く, 初回術後20年を超えるとその発生リスクが高いといわれている. しかし介在期間で60年以上の発生の報告は極めて少ない. 発生部位は吻合部が多いといわれ自験例も同様であった.進行度では進行がんが多いといわれているが自験例では早期癌であった.かかりつけ医の定期的内視鏡検診が早期発見につながった.高齢化が進む中で,初回胃切除術後50年以上経過しても常に残胃がんの発生リスクがあることが認識された.その発生には十二指腸液が関与しビルロート2法が多いと報告されおり,最近ではRouxY再建が行われているところであるが,それ以前に行われたビルロート2法再建術後の残胃は初回手術より長期間経過しても常に残胃がんの発癌のリスクがあると認識し,自験例のように定期的内視鏡検査を行うことが重要と考える.
索引用語 残胃がん, 発生