セッション情報 ポスターセッション(消化器外科学会)

胃-症例 4

タイトル 外P-425:

胃癌と多発微小GISTを合併した1例

演者 古川 健一朗(水戸協同病院・外科)
共同演者 只野 惣介(水戸協同病院・外科), 渡辺 基信(水戸協同病院・外科), 近藤 匡(水戸協同病院・外科), 石橋 敦(水戸協同病院・外科), 高屋敷 典生(水戸協同病院・病理部), 渡邊 宗章(水戸協同病院・外科)
抄録 【症例】80歳男性,体重減少を主訴に近医を受診し,胃癌(poorly differentiated adenocarcinoma)を指摘され,当院紹介となった.精査の結果,胃癌cStagelAと診断し,胃全摘術,D1+を施行.術後は合併症なく第14病日に退院した.病理組織学的検討において,肉眼所見上病変が不明瞭であったため全割して検索したところ,3つの早期胃癌(いずれもpT1a, pStagelA)に加え,固有筋層内に2個の腫瘍を認めた.これらは紡錘型細胞からなり,免疫組織化学染色でc-kit(+),CD34(+),α-SMA(-),S-100(-)でありGISTと診断した.核分裂像G1,腫瘍径T1であり,低リスク群であった.【考察】GISTはしばしば悪性疾患に合併することが知られているが,胃癌に胃GISTが合併した報告は比較的稀である.本邦における胃癌とGISTの合併例の既報のうち,c-kitを用いた診断もしくはRosaiの分類におけるuncommitted type(狭義のGIST)に絞り検討すると,本例は14例目であり胃癌が複数存在する症例は本例が初である.報告例のほとんどが術前に診断されており,本例のように病理検査ではじめて発見された報告は稀である.Kawanowaらは胃癌で摘出された胃を100検体全割し50個の微小なGIST(Microscopic GISTs)を認めたと報告している.その頻度はかなり高く,臨床的に問題となるGIST(Clinical GISTs)とは一線を画す病変であり,これに至るまでにはc-kit遺伝子以外の遺伝子変異が必要だと主張している.本症例は胃を全割することにより,Microscopic GISTsの存在があきらかになったものと考えられる.これらが合併する機序については偶発的に合併したとする説と,なんらかの遺伝子変異が存在するものとする説があるが明らかとはなっていない.【結語】胃癌で摘出した胃を全割することで診断に至った3個の胃癌,2個の胃GISTの合併例を経験したので報告した.これらは臨床的に問題となるGISTとは異なるMicroscopic GISTsである可能性が示唆されたが,その病態は依然として明らかとなっていない.更なる症例の集積が必要である.
索引用語 Microscopic GISTs, 胃癌